【ＦＴＸ】米連邦地検も捜査、ＳＥＣと破綻の全容解明へ

暗号資産（仮想通貨）交換業者ＦＴＸの経営破綻の状況を巡り、マンハッタンのニューヨーク州南部地区連邦地検が捜査に入った。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

　　非公開情報を理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、ＦＴＸの顧客資金の扱いやグループ会社同士の関係、内部統制を含めて、世界有数の暗号資産交換業者がこれほど早く破綻に至った経緯の全容解明を規制監督当局と捜査当局は目指す。米証券取引委員会（ＳＥＣ）もＦＴＸが破産申請する前の段階から同社と米国部門などを証券規則違反の疑いで調査しているとブルームバーグは先週伝えていた。

ＦＴＸを米連邦地検も捜査、ＳＥＣと並行し破綻の全容解明へ－関係者

　　米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）のバー副議長（銀行監督担当）は14日、暗号資産市場で起きている混乱が広範な金融システムへの警告を示しているとの認識を示した。バー氏はＦＲＢのウェブサイトに掲載されたコメントで、デジタル資産に対する規制強化が必要で、仮想通貨企業はウォール街の金融機関に適用されているようなルールの対象となるべきだと主張した。

バーＦＲＢ副議長、仮想通貨企業の規制強化必要－15日に議会証言

　　鈴木俊一金融担当相は15日の閣議後会見で、ＦＴＸの経営破綻を受け、「日本における利用者の保護は十分図られている」とした上で、破綻による市場への影響を予断を持たずに注視すると述べた。

ＦＴＸ利用者の保護は十分図られている、破綻の影響注視－鈴木金融相

　　14日の取引で仮想通貨価格は上昇に転じた。暗号資産交換業者バイナンス・ホールディングスの趙長鵬最高経営責任者（ＣＥＯ）が、流動性危機に直面している業界他社を支援する基金を立ち上げる計画を発表。この発表を受け、ビットコインは一時１万7000ドル台を回復した。

　　サム・バンクマンフリード氏のＦＴＸが劇的な形で破綻したため、基金設立は投資家の信頼回復が目的だと趙氏は説明した。ＦＴＸを巡る危機で、仮想通貨の時価総額は約2000億ドル（約28兆円）失われた。趙氏は基金の詳細を明らかにしていない。

バイナンスＣＥＯ、業界基金を設立へ－流動性危機のプロジェクト支援　

　　一方で、ＦＴＸの顧客は預けた資産を回収することが望み薄である兆候が強まっている。

　　ＦＴＸトレーディング・インターナショナルは破産申請前日の10日時点で負債が約90億ドルに対し、流動資産は９億ドルに過ぎなかった。貸借対照表の限定的バージョンを見た関係者が明らかにした。貸借対照表には「内部で適切に分類されていない隠された」法定通貨口座が80億ドルのマイナス状態にあることや、ユーザーが先週50億ドル引き出したことにも言及があった。

　　ＦＴＸの主要な暗号資産の価値は破産申請以来急減しており、ブロックチェーン分析会社エリプティックによれば、暗号資産の不正引き出しは推定４億7700万ドルに上ったとみられる。

ＦＴＸを巡る主な動向

• ビットコイン採掘会社、「さらに多くの」破産予想－ＦＴＸ破綻で混乱
• ＦＴＸの顧客、資産回収望み薄か－貸借対照表と不正引き出し示唆 
• ＦＴＸをバハマ警察が捜査、破綻に関連した犯罪の有無が焦点
• 機関投資家、仮想通貨と永久に決別か－ＦＴＸ危機がとどめに
• 仮想通貨市場、マージンコール相次いでいる公算大－ＪＰモルガン
• 仮想通貨貸付業者ブロックファイが引き出し停止、通常運営できず
• ＦＴＸの危機、個人投資家に最悪のシナリオか－破綻の脅威迫る中で
• ＦＴＸのＣＥＯ、傘下のトレーディング会社アラメダを閉鎖へ 
• セコイア・キャピタル、ＦＴＸ持ち分の評価額をゼロに
• ＦＴＸジャパンに業務停止・改善命令、資産の国内保有も－関東財務局

　　ＦＴＸを巡る最新の主な動きは以下の通り。

ビットコイン採掘会社、さらに多くの破産を予想

　　カナダのトロント市場に上場する暗号資産採掘会社は、ＦＴＸの経営破綻を受け、混乱が続きデジタル資産に対する信頼の危機が長引くと予想している。ハイブ・ブロックチェーン・テクノロジーズのフランク・ホームズ会長は2008年の世界的な金融危機の引き金となったリーマン・ブラザーズの破産申請に匹敵するイベントかもしれないと述べ、「次はどこか私には分からない」と付け加えた。

仮想通貨ＥＴＦのバルキリー、従業員30％削減

　　ビットコイン先物上場投資信託（ＥＴＦ）を手掛けていることで知られるデジタル資産投資会社バルキリー・インベストメンツは、ここ数週間で従業員23人のうち約30％を削減した。仮想通貨市場が混乱する中で、同業界では大幅な人員削減が続いている。

仮想通貨が一時急騰も、上げ幅縮小

　　ビットコインは趙氏の基金設立発表後に急騰したが、その後上げを縮小。ニューヨーク時間14日午前10時23分時点では1.2％高の１万6567ドル。この日のアジア時間帯には3.4％下落して年初来安値に迫る場面もあった。サム・バンクマンフリード氏のＦＴＸと関連のあるトークン、ソラナは一時11％高と、４営業日ぶりに反発した。

バイナンスＣＥＯ：悪いプレーヤー守ることは誰にもできない

　　バイナンスの趙ＣＥＯはインドネシアで開かれた20カ国・地域（Ｇ20）ビジネス・サミット（Ｂ20）で、ＦＴＸ破綻からの仮想通貨市場の回復を後押しする基金を立ち上げると表明し、「急成長しようと正しい手続きを省こうとする」悪いプレーヤーが同業界にはいると指摘。変動の激しい仮想通貨市場で業界大手は「しっかりとした基準を設定」するべきだと呼び掛けた。

　　趙氏はＦＴＸを買収する計画を打ち出しながら、翌日に撤回した経緯がある。同業他社に振る舞いを改めるよう主張し、「悪いプレーヤーを守れる者は誰もいない」と述べた。

ＦＴＸジャパン、預かり資産の出金可否を専門家と協議

　　暗号資産交換業者ＦＴＸジャパンは14日、親会社が米連邦破産法11条に基づく会社更生手続きを申請した状況下で、預かっている資産の顧客への出金が可能かについて顧問弁護士と協議を行っていることを明らかにした。

ＦＴＸジャパン、預かり資産の出金可否を専門家と協議－十分な額保有

原題：FTX Collapse Probed by Federal Prosecutors in Manhattan (2)、Crypto-Market Events Hint at Risks for Finance, Fed’s Barr Says、Bitcoin Miner Sees ‘Many More’ Bankruptcies After FTX Collapse、FTX Latest: Binance CEO Plans Recovery Fund, Laments Bad Actors、Crypto ETF Provider Valkyrie Investments Lays Off 30% of Staff、Cryptocurrencies Stem Losses on Binance’s Recovery Fund Plan（抜粋）