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 暗号資産(仮想通貨)取引所大手のFTX Tradingにおける経営破綻は、どこまで延焼していくのだろうか。海外では暗号資産融資の米BlockFi(ブロックファイ)が連鎖倒産するなど、まだ鎮火の様子はない。

 日本国内では、同社が11月11日に米連邦破産法11条(チャプター11)を申請してから3週間近くたった2022年12月1日時点で、企業や投資家などには目立った被害は見えてない。

 FTX Tradingを親会社とする日本国内の暗号資産取引所であるFTX Japanに対し、財務省関東財務局は2022年11月10日にいち早く行政処分を実施。業務停止命令のほか、利用者の資産保全や利用者保護を求める業務改善命令を出した。FTX Japanが保有する顧客資産は約190億円とされ、チャプター11によってそれが回収される可能性も危惧されていたものの、報道によると国内は海外と別管理になっており顧客に返金される見込みだという。

 日本国内では直接的な被害は大きくなさそうだが、間接的な悪影響が危惧される。非中央集権的なサービスをインターネット上で実現する「Web3」によるイノベーション促進に向けた各種施策にブレーキをかけるのではという懸念だ。

 日本では、デジタル庁が旗を振るなど国家戦略としてWeb3推進に向けた各種取り組みが進んでいる。その大きな1つが暗号資産の税制問題。Web3の取引において現状、暗号資産の利用は必要不可欠だが、税制がその足かせとなっている。税制の改正に向けた議論は端緒に就いたところだが、FTXの破綻による暗号資産業界への信用低下が先行きに影を落としている。

 現在検討されているのは、金融庁の2023年度税制改正要望に加わった「暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」だ。現状、法人が発行する暗号資産は期末に時価評価され、その評価損益が課税対象となることが課題となっている。改正要望では課題を解消するために、法人が自己保有する暗号資産を期末時価評価課税の対象外とするよう求めている。その結果、2022年12月にも公表される見込みの「税制改正大綱」に盛り込まれるかどうかといった段階だ。

 この期末時価評価課税の改正は、資金不足のWeb3スタートアップ企業の事業継続を支援するもの。検討内容としては、対象の暗号資産をすぐに売買できないようにするなどの条件が付される可能性もあり、議論の結果が待たれる。条件によっては扱いにくくなるわけだが、FTX破綻の影響で厳しい条件となることも想定される。