FTX破綻「業界共通の問題を象徴」 米上院公聴会
【ニューヨーク=竹内弘文】米上院銀行委員会は14日、暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングの経営破綻に関する公聴会を開いた。アメリカン大学のヒラリー・アレン教授は「FTXの失敗は、仮想通貨業界に共通する幅広い問題の象徴だ」と指摘した。仮想通貨に対する規制のあり方にも議論が及んだ。
アレン教授は、仮想通貨業界が抱える問題の一例として、裏付けとなる資産を持たないトークン(電子証票)を担保とする取引を挙げた。担保価値が大きく振れることで、投資家の身の丈を超えた投機的取引につながりやすいと説明。交換所が開示する資産保有証明も「厳密かつ独立した会計監査の代わりにはならず、詐欺を助長する」と主張した。
一方、投資家でテレビ番組司会者のケビン・オレアリー氏は「FTX破綻という事象によって、仮想通貨が持つ大きな可能性を捨ててはならない」と述べた。FTXの広告塔の役割を担っていた同氏は、FTX破綻によって1500万ドル(約20億円)の損失を被ったことを明らかにしている。
米連邦政府レベルでは現在、仮想通貨に関する規制はない。多数の投資家が影響を受けたFTX破綻を契機に、規制強化すべきだとの機運が高まっている。
シンクタンクのケイトー研究所で金融規制研究を専門とするジェニファー・シュルプ氏は、米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)が仮想通貨に対する監督を強めることに賛成した。ただ「異なるリスクは異なる方法で対処すべきだ」とも説明し、銀行など既存の金融機関を念頭に設計された規制を、仮想通貨業界に適用するのは不適切との見方を示した。
民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、仮想通貨がテロリストや犯罪組織、国際秩序に背を向ける「ならず者国家」が常用する資金洗浄手段である点を強調した。「他の金融業と同じく、仮想通貨業界が資金洗浄を防ぐためのルールに従うようにすべきだ」と主張した。
FTXはずさんな経営やリスク管理で資金繰りに行き詰まり、11月11日に日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。創業者で前の最高経営責任者(CEO)であるサム・バンクマン・フリード被告は米連邦地検に詐欺罪などで起訴され、12月12日にバハマ当局に逮捕された。
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