コンテンツにスキップする

国内暗号資産業界、レバレッジ取引の上限倍率引き上げを政府に要望へ

  • 現状の2倍からの拡大を7月末にも金融庁や政府関係者に求める方針
  • 上限規制の設定で取引の急減招いたことから引き上げで市場回復狙う

国内の暗号資産業界は7月末にも、口座に預けた証拠金以上の売買ができる「レバレッジ取引」において、現在2倍と定められている倍率の上限引き上げを金融庁に要望する方針だ。2020年に上限規制が設定されて以降、取引の急減を招いており、引き上げによって暗号資産市場の回復につなげたい考え。

  自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の小田玄紀副会長がブルームバーグの取材に答えた。業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の部会で原案をまとめ、JVCEAとの連名で金融庁や政府関係者に要望する。

  政府が暗号資産やブロックチェーン技術を用いた「Web3」の推進に向けた環境整備を掲げる中、倍率の上限引き上げで取引が活発になれば「日本に暗号資産関連の会社が集まってくる」と小田氏は指摘した。

  レバレッジ取引の上限倍率は投機を助長しているなどの指摘を受け、20年5月施行の法改正で2倍と定められ、完全実施まで一定の猶予期間が設けられた。JVCEAによると、20年度の暗号資産取引金額全体のうち証拠金取引は8割以上を占める97兆円超だったが、21年度には37兆円程度、22年度には15兆円弱にまで減少した。

国内の暗号資産取引状況

証拠金取引の金額が大きく減少

出所:日本暗号資産取引業協会の資料から作成

注:年度ベース、証拠金取引は想定元本ベース

  小田氏は、取引額の減少で世界の暗号資産市場における日本の存在感は薄れていると指摘。日本がWeb3の推進に力を入れたとしても、取引が少なければ「日本の市場は盛り上がっていないと多くの人は思ってしまう」との懸念を示した。

  また、現在、日本の暗号資産の投資家は9割以上が個人だが、レバレッジ取引の倍率引き上げによって市場が活性化すれば、機関投資家の参入も見込めるとも述べた。

  具体的な上限の引き上げ幅については、個人の間で取引が定着している外国為替取引を例に挙げ、証拠金の上限が25倍でボリュームゾーンは6-8倍程度ということなどから、会員各社からは4-10倍を求める声が多いという。

      一方、顧客保護の観点から、倍率の引き上げとともに、一定の損失が出た段階で決済して損失を確定する「ロスカット」の体制強化など、想定される課題への対策も検討していく。

  暗号資産取引のレバレッジ上限の引き上げについて金融庁の担当者は、業界団体と議論することには前向きであるが、説得力のある理由を提示しなければならないと指摘。また、レバレッジ上限を引き上げることが、Web3を成長させるという政府の方針にどのように結びつくのかは明確でないとした。

関連記事:

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE