仮想通貨、「顧客資産保護の徹底を」 各国当局に提言
【ニューヨーク=斉藤雄太】世界の中央銀行・監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)は18日までに、暗号資産(仮想通貨)を扱う事業者の規制・監督強化を各国当局に求める政策提言を公表した。国際的に広く共有できる規制の枠組みを提示し、関連企業の相次ぐ破綻で問題になった顧客資産の保護の徹底を促した。
2022年11月に破綻した仮想通貨交換業大手FTXトレーディングは内部統制がずさんで、顧客資産を流用していた。FSBの提言では、顧客資産の保護や利益相反に関するリスクへの対応、当局間の国境を越えた協力という3点を重視した。
具体的には、仮想通貨事業者や市場の規制・監督について9つの提言をまとめた。例えばビジネスで生じうる結果への明確かつ直接的な責任や説明責任を事業者に求め、それに対応できるような企業統治体制の整備を促す。
当局が必要なデータを事業者から入手できるようにしたり、業務・財務に関する情報を顧客に開示させたりすることも求めた。仮想通貨の発行や売買の仲介など複数の事業を手がける企業の利益相反やリスクへの対処も掲げた。
ドルなどの法定通貨に連動するよう設計された仮想通貨「ステーブルコイン」の規制・監督についても提言内容を更新した。同コインを扱う事業者に対し、経営が傾いた場合の再建・破綻処理計画を用意させておくことなどを盛った。
FSBは公表文で「(FTX破綻など)昨年の出来事は仮想通貨や事業者の本質的なボラティリティー(変動率の大きさ)と構造的な脆弱性を浮き彫りにした」と指摘。仮想通貨市場の動揺が金融システム全体に波及するリスクにも警戒感を示した。
18日に閉幕したインドでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、議長総括で「FSBの提言を支持し、(各国当局の)効果的かつタイムリーな実行を求める」とした。
9月開催のG20首脳会議(サミット)に向け、FSBは国際通貨基金(IMF)と共同で規制の工程表なども盛り込んだ文書を作成する。