過熱する仮想通貨「投資セミナー」に潜入!そこで目にした驚きの実態

DVDはワンセット5万円~10万円…

その男がステージに姿を現すと、集まった1000人を超える聴衆は大歓声と拍手でこれを迎えた。熱のこもった口調で語りかけるのは、投資話だ。

「スキルもいらない、知識もいらない、人脈もいらない、時間もかからない、お金も要らない。さらに世界中のどこにいても大丈夫。そういうすごく稼げる案件がある。それは本物の暗号通貨(仮想通貨)を持っておくこと」

「(仮想通貨である)ノアコインとは、フィリピンの政財官民が一致団結して作っている。国全体で取り組んで行こうと(している)。政治と官僚と財閥とか、そういったものが手を取り合ってやっていこうというものがあれば、そりゃあそれに乗るでしょ、という話。それがまさにノアコインというもの」

聴衆の心をふんだんに煽る言い回し。すでに講演が始まって2時間は経っている。それでも男は疲れを知らないのか、その弁舌は時間とともに快活になっていく。聞き入る聴衆も、その男に羨望のまなざしを送っていた――。

「アツい仮想通貨」らしいが…

この男を仮に「A」と呼ぶ。Aの素性については後述するが、Aがさかんに購入を呼び掛けている「ノアコイン」とは、仮想通貨(暗号通貨)の一種なのだという。

仮想通貨と言えば、誰もがビットコインを思い浮かべるだろう。

2009年に誕生したビットコインは年々その価値を上げ、今年に入り1ビットコインは1000ドルを突破。2月には史上最高値を更新した。誕生時と比べれば、その価値は10万倍以上になったとも言われ、誕生当初から保有していた人を中心に、世界には「ビットコイン長者」が次々と誕生している。

このビットコインの成功にあやかろうと、昨今、数多の仮想通貨が誕生している。その数は600とも700ともいわれるが、なかでも「プレセール」と称し、実際の取引が開始される前に、その仮想通貨を販売する例が急増している。

実際に取引が開始される時にある程度の公開価格をつけたい主催者が、公開前に先行投資を募る。買い手にとっては、公開までは購入者しかいないため、購入が早ければ早いほど価格が上昇し、先行者利益が得られるというわけだ。

そのような形をとる仮想通貨のひとつが、Aが購入を呼び掛けるノアコインである。

ネット上に溢れている、ノアコインを販売するサイトなどによると、今年1月から「第1期のプレセール」が始まっている。全4期にわたり432億枚が事前販売され、18年6月の公開時には2160億枚がリリースされる予定だという。

Aの説明にもあるように、ノアコインの特徴の一つが、「フィリピンの政財官民が一致団結して作っている」通貨を謳っていることだ。

その説明によると、フィリピンの政財官民の賛同者が非営利団体「ノア・ファウンデーション」を組成。フィリピンの社会問題を解決し、経済成長を支援するためにノア・プロジェクトなるものを立ち上げた、と主張している。

NOAH FOUNDATION公認を名乗る販売会社HPより

このノアコインの旗振り役の一人がAであり、来年の公開時に一攫千金を狙う人々が、いま、Aの周りに群がってきているのである。ノアコインに関するセミナーを開けばたちまち満員となり、いま、ネット上ではノアコインは最も「アツい」仮想通貨のひとつとして、注目を集めているようだ。

ところがこのノアコイン、駐日本フィリピン共和国大使館が出した通知が発端となり、騒動となっているのだ。

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