「仮想通貨」は通貨ではない、ましてや金融商品ですらない

ビットコイン暴落に巻き込まれないために

投資商品としての仮想通貨

大きい意味でフィンテック(Fintech=ITを使った金融技術)の一環として、初の「仮想通貨」であるビットコイン(Bitcoin)が誕生したのが2008年。もう9年も前のことになる。

最近、筆者が金融市場についての講演を行うと、ビットコインについての質問を受けることが多くなった。これはほかの投資性金融商品の市況が伸び悩んでいる中、ビットコインの価格が上昇しており、この1月から約3倍になったことで注目を集めているからである。

もっとも、この高騰は主として中国本土の投資家の購入によるもの。彼らは、人民元の値下がりリスクをヘッジしているのである。最近、人民元が2カ月ぶりの高値となり、通貨制度も変更し、値下がりリスクも低下したことから、ビットコインを売って人民元に戻す動きがあり、一般投資家の損切りも加わり、最大で約4割下落した。

 

ところで、この仮想通貨という名称が、誤解と混乱を生んでいるように思えてならない。そもそも通貨という言葉は、法的「通」用性がある「貨」幣(おカネ)のことなので、各国に1つしかない。日本であれば円、米国であればドルである。それゆえ「仮想通貨」は、本来は「仮想貨幣」と呼ぶべきものなのである。

仮想通貨は、中央銀行が発行・参加するのではなく、制度全体に対する市場参加者の評価(信任)で成り立っている。突き詰めれば、みんなが信じるかどうかがポイントとなる。当初、ビットコインは決済という目的のために誕生した。しかし、現在、投資対象としての意義が大きくなっている。日本では取引をする目的の約95%は投資(投機)である。

仮想通貨は、日本においては、法的には改正資金決済法(2017年4月施行)で定義されている。ここでは「財産的価値」とされており、通貨ではないことが明記されている。要するに単なるモノなのである。

しかも金融商品でもないので、金融商品取引法でカバーされてもいない。一部に誤解があるが、7月から消費税がかからなくなるものの、これは他のG7諸国に合わせるだけのことで、通貨として承認されたことを意味するわけではない。

ようやく始まった消費者保護

金融庁をはじめとする当局の仮想通貨の捉え方は、主に消費者保護とマネー・ロンダリングの観点からである。改正資金決済法によって、仮想通貨を購入する「取引所」を検査対象とした。2014年に起こったビットコイン取引所、マウント・ゴックスの破綻の事例などに対応した形だ。

検査といった場合、銀行などには金融庁が入るが、仮想通貨取引所に入るのは、監査法人である。ビットコイン取引所のトラブルは最近でも続いており、日本の損害保険会社では「仮想通貨」保険を販売までしている。

消費者保護の観点からは、相場の乱高下によって消費者が被害を受けることが懸念されている。このような小さい市場の金融商品は平常時には取引が厚いが、異常時になってくると取引(オーダー)が一斉になくなる。すなわち大きな損失が発生する可能性がある。いってみれば、昔からあった相場物や仕手筋の動きで一般投資家が損を被るのと同じ話である。

マネー・ロンダリングの問題では、取引所は取引者の本人確認を銀行並みに行うことが求められている。たとえばIS(イスラム国)の資金源のメインは、仮想通貨(送金)とプリペイドカード(現物送付)といわれている。ちなみに、プリペイドカードにも規制が入る予定である。

このようなことを分かって取引するならば問題はないだろうが、ともかくこれは法定通貨に対するリスク管理とは違う次元のものなのである。

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