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君にも暗号通貨が作れる!? ビットコイン、イーサリアムが握る新しい経済観

What will happen to the encryption currency

2017.06.02

Updated by Ryo Shimizu on June 2, 2017, 08:49 am JST

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ビットコインが再び値上がりしています。
それにともなって世界のオルトコイン市場も活気が出てきています。

国内最大の暗号通貨市場であるBitflyer社のBitflyer Lightningを見ていると、目の前でリアルタイムで取引が行われていてワクワクしてきます。

なにせ興味深いのは、単なる暗号という、本来なら価値のないものに「コイン」という名前を与え、「取引所」を設置しただけで、誰かが価値を見出してこのゲームに参加してくることで実体経済にまで波及するというポイントです。

ビットコインはここ一週間で乱高下しているので、一概に今すぐ買ったほうがいいとは言い難いが、それでも堅調に伸びているのは間違いありません。

筆者は1年ほど前に1000円ぶんのビットコインを飲み台の割り勘として友達からもらいました。
先日「ビットコインが暴落した!」と大騒ぎしていたので慌てて見に行くと、むしろ筆者のビットコインは倍以上に価値が上がっていておどろきました。「暴落した」と騒いでいたのは、35万円まで上がったビットコインが24万円くらいまで下がったことだったのです。しかし一年前は約6万円でしたから、トータルでは4倍くらいは上がっていることになります。今は再び値が戻してきていて、27万円程度まで回復しています。

筆者もブロックチェーンの勉強と称して、深層学習用のマシンがあいたときにイーサリアムという暗号通貨を発掘していました。
これも基本的にはそんなに儲からないのですが電気代よりはマシなので、本来は人工知能を作るための機械ですが、遊休時にはイーサリアムを発掘するリグとして動作させていたのです。

半年ほどでビットコインとあわせて資産が10万円ほどになりました。
最初は1000円から始まったことを考えると驚きです。お金を稼ぐことそのものを目的にしていなかったのですが、相場そのものを目的にしていなかったのでこれだけ上がるというのはビットコインを始めとする暗号通貨に対する期待値がそれなりに高いからではないでしょうか。

それまでの通貨の強さは基本的には発行する政府の信用や国力によって決まっていました。
その背景にあるのは軍事力です。

日本もペリーが来て開港した時はかなり不利な通商条約を強要されました。
プラザ合意前までの1ドルは、日本円で360円。なぜ360円だったのかというと、「円は360度だから」という、根拠もへったくれもない発想からです。

その後、変動相場になって、今はご存知のように1ドル=100円前後というところまで円の水準は高まりました。
円高だ円安だでいろんな人が騒ぐのですが、円高で儲かる商売もあれば円安で儲かる商売もあるので、どっちがいいのだとは一概には言えません。一つ言えるのは経営者は国際的な経済感覚を正しく持っていなければならないということです。

ビットコインを投資対象として考えると、筆者はまだリスクが大きすぎると思っています。仮に将来的にビットコインが1BTC=100万円まで上がるとしても、それは今の価格(約30万円)の3倍でしかないので長期ポジションで持つことはあんまり意味がなさそうだし、暴落する可能性も少なくないと思います。

逆に仮にビットコインが10万円台まで下げたら、さすがにそれは買ってもいいんじゃないかと思います。

あとはデイトレードで相場の流れを見極めて、売ったり買ったりを繰り返して細かく稼ぐわけですが、今のビットコインはスプレッドが大きいので小刻みにやると却って損をする可能性が高まります。

それでも一日5%くらいの差益が出せるようになるとそれなりに儲かるのでこれは夢中になる人いそうだな、と思いました。でもいいときはいいんだけどダメな時は一瞬なのでこういうことはお小遣いの範囲に留めることを強くお勧めします。

ビットコインを含む暗号通貨が面白いのは、発行主体がよくわからないところです。
建前としてはビットコインのネットワークに入っているマイナーは全て発行主体なのですが、現実的にはビットコインの採掘は専ら中国の奥地で電気代と土地代の安いところで大量のマイナーが走っているとまことしやかに噂されています。

実際に蓋を開けてみると、ビットコインは事実上ごく少数のマイナーによって維持されていてもおかしくはないわけですが、今のところはある程度うまく機能しています。

暗号通貨はビットコインやイーサリアムだけではなく、物凄く大量にあります。ありすぎて追いきれないくらいです。
暗号通貨は誰でも発行することが出来るからです。

暗号通貨の価値を決めるのは、それが市場で相対取引される以上は、市場です。
たとえば筆者がある日、「シミコインという暗号通貨をつくろう」と思えば、オープンソースのビットコインやイーサリアムを利用してすぐに作ることができます。

ただし、作っただけでは意味がありません。
いまどきの暗号通貨は、作った後で、P2Pによるマイニングシンジケートが必要だからです。
また、取引所も必要です。

つまり新しい暗号通貨を作るにはまず賛同者が必要なのです。それもできるだけ多く計算資源を提供できる人が望ましいのです。

そして暗号通貨が実際の通貨のように流通するためには、既存の貨幣と交換できる取引所が必要です。
この取引所で、暗号通貨と実際の通貨を交換するわけです。

たとえばBitflyerでは日本円とビットコイン、日本円とイーサリアムを交換することができます。
イーサリアムからビットコインを買ったりその逆もできます。

それまで取引所で交換できなかった暗号通貨を、交換可能にすることをICO(Initial Coin Offering)といいます。株式を新規公開するのをIPOというのに比べて、ICOは暗号通貨が新規公開されるのと同じ意味になります。

日本では銀行法や出資法の関係からICOによる上場は困難だとされてきましたが、フィンテック関連の特別措置で、金融関係の規制が一時凍結されたので、この瞬間なら日本でもICOが可能です。

実際、海外のプロジェクトではICOによって10億円単位の資金調達を実現しているケースもあります。イマドキ日本ではIPOしても10億も調達できることは稀ですから、公共性の高いプロジェクトはICOに期待するケースが少なくないのではないかと思います。

イーサリアム自体がICOに似た方法によって資金調達を達成していたはずです。

企業がIPOする場合、コストが非常にかかります。
しかも、資金調達はほとんど一回くらいのタイミングしかできないにも関わらず、IR(投資家向け情報開示)の基準が厳しく、上場するまでには監査法人の監査も受けなくてはなりません。しかし監査法人の監査があったとしても、実際には粉飾決算があったり循環取引があったりと、そもそも日本ではIPOの妥当性が問われ始めています。

ICOの場合、そうした法的規制が今のところなにもないので、玉石混交になるおそれがあります。
しかし一時的に規制を凍結して、とりあえず実験的にいろいろなことをやりながら問題点を洗い出していこうという今の政府の方針には基本的に賛成です。

ICOは国ではない主体、市場が暗号通貨の価値を決めることになります。
IPOも本来はそうなのですが、企業の株が自由に売買できると混乱が大きいので規制があるわけです。
未公開企業でも相対で株の譲渡ができることを考えるとIPOしてるかどうかは誰でも株が買える状態かそうでないかの違いだけです。

日本の取引所はまだICOに対応しているところはありませんが、いずれICOがIPO市場以上に活性化する可能性も十分あると思います。
国外ではpoloniexなどの市場がICOに対応しています。

証券会社が株を売るIPOと違って、ICOはいまのところアンテナの高い人しか参加することができません。もちろんICOは必ず上手くいくわけではありません。金銭を失うリスクもありますので、投資を検討される方は慎重にして欲しいと思います。

ですが、こうした新しい金融の試みはどんどんやっていったほうが面白いのではないかと思います。
お金なんて、所詮は単なるデータに過ぎないので、データの妥当性をコンピュータが保証するというのは実は至極まっとうなことのように思えるのです。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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