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日本デジタルマネー協会 / ビットコイン / Bitcoin

スケーリングを巡る論争のまとめ等(含むBitmain訪問記)

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7/7, 8 Bitmain社を訪問したので、訪問記を書きます。

また7/13はコア開発者達と会いまして、

更に7/20は著名なLukedashjrとCraig Steven Wrightと会いまして、ほぼ全貌を把握した積もりです。

短い結論を書くと、2年に渡るオフチェーン(小ブロック)vs オンチェーン(大ブロック)スケーリングの論争は、Bitcoin Coreのメインチェーンから、Bitcoin Cashがスピンオフする形で、2つのチェーンに分岐して、以降、2つのチェーンが、それぞれの方法でスケールを競い合う予定です。ビットコインの未来は不確定要素が多いですが、多くの関係者が納得して、再び前向きな開発・事業開発を継続すると思われます。

以下、簡単なメモです。

7/7/2017

オーガナイザーはケンさん@東京ビットコインミートアップで、日本から総勢15名が参加。7/7、Baotou(モンゴル自治区の包頭市)のマイニング工場を見学した。

Bitmainは、北京大学で経済学と心理学を学んだ32歳のジハンウー(2011年にサトシのホワイトペーパーを中国語に翻訳した初期ビットコイナー)と数名が共同創業した会社で、2017年時点で800名雇用は業界最大手である。LSI、マイニング機器(製造と販売)、マイニング工場(自社マイニング分及びホスティング)、マイニングプールを幅広く手掛けており、垂直統合型のビジネスモデルである。

競争力あるマイニング工場には、安い電気代(3-5円/kwh)、効率的な空調、効率的な空間配置、好意的なローカル政府、ある程度の物流が、必要となる。

Baotou工場は2年前に稼働開始し、当時は最先端工場として、最大のハッシュレートを持っていたが、現在では約20ある工場の中で、下位との事。それでも機器は2年間で4世代目に更新されているので、技術革新が伺える。

Baotou工場は空調に特徴があり、壁に水を流し、気化熱で空気を冷している。当日、吸気側で25℃、マイニング機器を経由して、排気側は45℃を実現。

敷地内に10棟あり、空調のための空間配置が棟により微妙な差異があった。消化器が配備されていた。またオフィス棟もあった。

見学後、Q&Aあったが、それはジハンに聞いてくださいとの回答が複数あって、ジハンの役割の重さを感じた。全般に若く、明るく、良い社風を感じた。

7/8

翌日は北京郊外のBitmain事務所を訪問、ジハンとのQ&Aを行った。ビットコインはブロックサイズを巡って、保守的な小ブロック派と革新的な大ブロック派に分裂している。東京は大ブロック派の一大拠点であり、ロジャー、ジェリー、エミル、ニール、デーブ、アーロン等が著名である。ジハンはSegWitをブロック中で、Bitcoin Unlimitedを稼働中。ただし、香港合意に続き、NYAにも合意したため、ブロックサイズを上げればSegWitをactivateする立場。

小ブロック派(オフチェーンスケーリング派)は、ビットコインは21Mの上限があり、8年以上、様々な攻撃に耐え続けて、分岐せず、コンセンサスしている実績を重視している。またスケールはレイヤー2(ライトニングネットワーク、サイドチェーン等)でやりたい。一方で、大ブロック派(オンチェーンスケーリング派)はブロックサイズを1MBから2〜16MB程度に上げる事で、スケールさせたい。

小ブロック派は、大ブロックにすると、コンセンサスが困難になるリスクやマイナーの更なる専門化と集中化を恐れている(例えば、全世界で大規模な3-5社に集約化される可能性あり)が、大ブロック派は大規模に集約化して良いと考えている模様。

また小ブロック派は価値の保存が優先事項で、価値の交換の媒体はレイヤー2で時間を掛けてやりたいが、大ブロック派は価値の交換の媒体を、今すぐ、ビッグブロックで実現したい。

この議論は2015年から継続していて、解決せず、現在に至るが、大ブロック派はハードフォークを決行して、小ブロックと大ブロックの2つが健全に競合する事を望んでいる。ジハンが、ハッシュパワーをどう配分予定かは不明。聞き逃しました。ただし、若く優秀な起業家である事は感じまして、好感してます。また初期ビットコイナーで、自社収益の多くをBitcoinの採掘で得ているため、ビッグブロックとの引き換えにSegWitをブロックしたが、それは一時的な政治利用で、Coreをリスペクトもしているので、Coreとの共通利益を設定出来る可能性は残っている。

7/13

業界で影響力の強いJohnson Lau, Nicolas Dorierと会う。様々な会話をしたが、プログラマー達は、既にコードを書いたし、検証も終えたので、あとはコミュニティに任せたい。個別に説明するとか、説得するとかは、分散型合意システムの設計に反するので、興味がない。コア開発の全員がUASFに賛成ではないが、強く反対はしない程度の醒めた立場が多い。

更にSamson Mowと話す。NYAはBIP 91として、実行される。ただし、2MBハードフォークは実行されないだろう、それは関係者がリスクと認識するだろうから。

7/20

コア開発の中でも最も小ブロックへのこだわりを持つLukedashjrと会う。SegWitが既にブロックサイズ拡大なので、やるべきをやった。その後、2MBに上げるのは必要な時期に実行予定である。ブロックサイズを上げないとは言ってなくて、保守的に引き上げる予定とのコメント。

大ブロック派で目立つのは、ジハン、ロジャー、ジェリー以外だとBBCに自らをサトシナカモトと名乗ったCraig Steven Wright。この曲者にも会えたのは幸運。複数の質問に対して、ノーコメントと茶化しながら言われたが、8/1にBitcoin Cashとしてスピンアウト後、Coreのチェーンを攻撃予定あるか?聞いたところ、Cashチェーンの立ち上げに注力予定との回答。

これらを総括すると、2年間の論争は終了して、2つのチェーンが、それぞれの方法でスケールを志向して、異なる発展を続けると予想してます。

以上

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