金融ベンチャー叩きで露呈した「新しいモノ潔癖症」という日本の悪弊

批判、批判で潰していいのか

スマホをベースにした新生代の金融サービスがたびたび物議を醸している。

新しいサービスの登場は利用者に大きなメリットをもたらしてくれる一方、内容が行き過ぎれば社会問題化する可能性も高まってくる。

このあたりのバランスをどう取るのかが難しいところだが、日本の場合、斬新なサービスが登場すると、社会がヒステリックに反応してしまい、結果的に諸外国に新しいビジネスの覇権を奪われるというパターンが多い。

スマホ時代ならではともいえる一連の新サービスについて、市場メカニズムを通じてどのように取捨選択を行い、優良なサービスを育てていくことができるのか、日本社会の成熟度が問われている。

1日で3億円が動いた

先日、現代版質屋ともいえるアプリ「CASH」が、オープンからわずか1日でサービスをストップするという騒ぎがあった。CASHは、質入れしたい商品をスマホで撮影するだけで、すぐにお金が振り込まれるという驚くべきサービスだったが、オープンと同時に申し込みが殺到。すぐにサービス停止に追い込まれてしまった。

CASHは設立間もないベンチャー企業が提供しているサービスで、いわゆる質屋のビジネスをアプリ上で運営している。

利用者がブランド品などをスマホで撮影すると、運営企業は査定を実施。すぐに査定額が提示され、お金はアプリ内のウォレットに支払われる。銀行口座を登録すれば、銀行にお金が振り込まれるほか、コンビニでの引き出しにも対応している。

商品は2ヵ月以内に運営会社に送付すればよく、受け取ったお金は2ヵ月以内であれば返済が可能だ。その場合は商品も返還される。15%の手数料を支払うことで商品を取り戻すことができるが、この15%の手数料が質屋でいうところの金利に相当すると考えてよい。

CASHホームページより

ここまで筆者は質屋と述べたが、厳密に言うとCASHが提供しているサービスは、厳密に言えば質屋の業務ではない。

本来の質屋というのは質屋営業法の規制を受けており、都道府県の公安委員会から営業許可を取った上で、金利を明示する必要がある。また、質入れをしただけでは商品の所有権は質屋には移転せず、期限を過ぎてはじめて質屋側に所有権が移転する。

これに対しCASHの場合には質入れではなく、買い取りという形になるので、質屋が付随的に行っている買い取りサービスの一種と判断してよいだろう。

 

商品を返してもらう場合には、15%の手数料を払って再度、売買するという形になるわけだが、15%の手数料を金利と考えると、これは事実上の貸金業ではないのかという見方もできる。同社は、質屋でも貸金業でもなく、あくまで古物商という位置づけだが、貸金業とみなされる可能性は高いだろう。

また同社の経営者も「質屋のようなサービスを提供したい」と発言しているところからも、貸金業のビジネスを強く意識していることは間違いない。

CASHは、6月28日にサービスをスタートさせたが、約16時間の間に申し込みが殺到。商品数で約7万3000個、金額としては約3億7000万円が支払いの対象となってしまったのである。この時、申し込んだ利用者のうち何割が、実質的な消費者金融であると認識していたのかは定かではない。

運営会社である株式会社バンクのメンバーは社長を含めて5名、資本金は900万円しかなく、これだけの取引を一度に処理する体力はないと考えられる。こうした状況から、翌日にはサービスを停止し、現在に至っている。

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