金融の大原則が守られていない
仮想通貨の問題点は、いまだにマスコミにもみられるが「通貨」であるとの誤解(法的にも通貨ではない。正確な定義は「財産的価値」、つまりはモノ)や、先日のビットコイン分裂騒動にみられたブロックチェーンの構造上の問題、そして、裏打ちする価値がない中で相場物のように乱高下することである。
しかし、実は他にも大きな問題がある。それが、当局が乱高下と共に注視している「マネーロンダリング(マネロン=資金洗浄)」の問題である。
ビットコインをはじめとした仮想通貨、フィンテックの分野をみていると、金融業界出身以外の方が取引を行っていることが多いせいか、金融の原則を軽んじていることによる事件が発生している。
その原則とは、利用者(投資家)の保護とマネロンの阻止である。この2つは金融の大原則である。
仮想通貨は金融商品ではないので、「金融商品取引法」による救済は一切受けられない。そもそも、プロの金融の世界では強固なセキュリティは大前提で、最近発生している事件にみられるような、セキュリティの甘さはあり得ない。
こんな手法でごまかす
たとえば、以前、ビットコイン取引所「マウントゴックス」で大量のコインや預り金が消失、運営会社も破たんし、利用者に大きな被害が出た。最近でも、日本の大手ビットコイン取引所「ビットフライヤー」の口座から資金が抜き取られたとされる事件が発生している。
犯罪者は盗んだビットコインの行方をたどれないように何千回もの送金を繰り返し、さらに別のビットコイン送金とも合算して、最終的な行方を突き止めることをほぼ不可能にする「ミキシング(Mixing)」と呼ばれるテクニックを活用する。
仮想通貨といわれるものは、現在、世界に1000以上存在するが、中には言葉でたくみに人を集め「詐欺コイン」を販売する業者も多数存在する。
また、企業のパソコンにウイルスを送り込みロックをかけ、一定金額が支払われるまで解除しない「ランサム(身代金)ウェア」も流行しており、この身代金は身元がたどりにくいビットコインである。
建前では、ブロックチェーンにおいて認証(マイニング)され、履歴が逐一記録されるため、取引はすべて追跡できるはずであった。
それでも、この7月には「ビットコイン」を使って少なくとも40億ドル(約4400億円)相当のマネロンに関与した疑いで、ブルガリアの取引所「BTC-e」の運営者であったロシア人の男が逮捕されている。