満員の「仮想通貨セミナー」で明かされたビットコインの光と闇

武器、詐欺、闇取引との親和性

立錐の余地もないほど

「北朝鮮が経済制裁をビットコインの利用で回避しようとするなど、仮想通貨はグローバルに使われている。武器や薬物などダークマーケットから色々なものが送られてきて、それに仮想通貨が使われる。ブロックチェーンなど金融技術は、日々、進化するが、悪用する側も進化している。今後、政策、情報、課税、規制などあらゆる面で各国が、国際的に連携して対応することが必要だ」

東京・麹町の都市センターホテルで、9月4日に開かれた「ブロックチェーン・カンファレンスTOKYO2017」で、口火を切って講演したアメリカ合衆国国土安全保障省のロバート・ホィットカー特別捜査官は、こう警告を発して各国の連携を訴えた。

会場はチケット売り切れで立錐の余地もなく、ビットコインに代表される仮想通貨とそれを成り立たせるブロックチェーン技術への関心の高さを示していた。

カンファレンスの模様(筆者撮影)

実際、ビットコインの急騰は投資家の意欲を刺激、乗り遅れてはならないと、買いが買いを呼ぶ展開が続いている。分裂の危機や中国当局の規制で乱高下するものの、トレンドは右肩上がりで、9月2日には過去最高値の1ビットコイン54万円を突破した。今年1月に10万円前後だったので5倍強。ビットコイン長者が続出している。

 

ビットコインには管理者がいない。つまり責任の所在がハッキリしない。担保するのは複数のコンピュータで取引を監視するブロックチェーンというテクノロジーだけ。

ただ、このシステムが、広範に認識され、確立されると、銀行が国家を背景に確立してきた信用や信頼に取って代わることになる。それだけの利便性が仮想通貨にはある。

仮想通貨やブロックチェーンが、既存システムを破壊するという観測は少なくない。代表する意見は次のようなものだ。

今は、インターネットの黎明期と同じ。90年代の初めは、信用できるのか、保証をどこに求めるのか、何に使えばいいのか、といった議論はあったが、やがて金融も販売も情報も、ネットが役割の中心を担うようになった。

株を買うという行為ひとつとっても、ネットで送金して株売買のうえで決済する、なんて最初は誰も想定していなかったが、今や当たり前。仮想通貨による決済を誰もが利用すると、既存の銀行が駆逐される。

また、ブロックチェーンが土地登記や住民登録など金融以外の分野に普及すると、役所の仕事を奪うことになる――。AI(人工知能)が人から仕事を奪うという予測と同じで、斬新なテクノロジーには期待と不安がないまぜになる。

ただ、その不安を抱くよりも前に解決すべき問題がある。管理者不在と匿名性ゆえに生じる仮想通貨の犯罪利用である。

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