コラム:仮想通貨のリスク高める米当局間の「規制格差」

コラム:仮想通貨のリスク高める米当局間の「規制格差」
 12月4日、米証券取引委員会(SEC)は、新設のサイバー部隊が違法なイニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)を摘発したと発表した。写真は10月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)
Tom Buerkle and Gina Chon
[ニューヨーク/ワシントン 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米証券取引委員会(SEC)は4日、新設のサイバー部隊が違法なイニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)を摘発したと発表した。
しかし数日前には米商品先物取引委員会(CFTC)がCMEグループとCBOEに仮想通貨ビットコインの先物上場を認める方針を示したばかりで、米当局間の「規制格差」がサイバー空間にも及びつつある様子が浮き彫りになった。仮想通貨を巡る規制面の食い違いが拡大し、投資家のリスクは高まっている。
カナダ・ケベック州に拠点を置くPlexCorpsは、州当局から証券に関連した活動を禁じられていたにもかかわらず、今年夏にICOを実施。同社は1日のフェイスブック投稿で、同社の通貨がコインマーケットキャップ・ドット・コムの集計でこの日最も急上昇したデジタル通貨だったと胸を張ったばかりだ。
SECによると、PlexCorpsは仮想通貨の販売で1500万ドルを集め、投資家には最大で1354%のリターンが手に入ると売り込んでいた。専門家で構成される国際的なチームを擁していると虚偽の説明をしたほか、幹部がかつて証券法違反で有罪になっている事実を隠ぺいし、幹部らが集めた資金の一部を私的に流用していたという。
コインマーケットキャップによると、同社の仮想通貨は4日に47%値下がりした。
SECのサイバー部隊は9月に発足し、事件の摘発は今回が初めて。仮想通貨市場は今年に入って爆発的に拡大。ビットコインは1月からの上昇率が1000%を超えた。ICOという言葉は1年前にはほとんど耳にすることがなかったが、今年は調達額が35億ドル近くに達し、仮想通貨は世界中で1300種類以上に広がった。
不正の機会も同様の勢いで増えている。
2大規制当局のSECとCFTCはこれまでケース・バイ・ケースの対応を取ってきた。SECは7月、DAOによる仮想通貨売却が証券の売却に当たるとし、登録を義務付けた。一方、CFTCは仮想通貨をコモディティ―と位置付け、より寛大な姿勢だ。
こうしたアメとむちの戦術によって技術革新は花開いたが、既にその手法は効力を失い、3400億ドルの仮想通貨市場に混乱をもたらしている。規制を統合し、協調を進めなければ、SECとCFTCは犯罪者に、うぶな投資家を食い物にするすきを与えてしまう。
●背景となるニュース
・米証券取引委員会(SEC)は4日、違法なICOを行ったPlexCorpsと同社の幹部など2人を摘発したと発表した。同社は8月以降、仮想通貨を発行して1500万ドルを集めたが、その際に投資家に1カ月弱で13倍の利益が手に入ると実現不可能な約束をし、証券法に違反した。
・摘発したSECのサイバー部隊は、ICOやブロックチェーン技術、ハッカー攻撃、ソーシャルメディアを通じた偽情報拡散などを取り締まるために9月に発足し、今回が初めての摘発。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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