焦点:ビットコイン先物上場を巡る数々の不安

焦点:ビットコイン先物上場を巡る数々の不安
 12月7日、仮想通貨ビットコインの先物取引が今週末から始まる。ファンはわくわくしているが、監視の行き届かない通貨だけに、専門家はさまざまなリスクを警戒している。写真は11月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)
[ニューヨーク 7日 ロイター] - 仮想通貨ビットコインの先物取引が今週末から始まる。ファンはわくわくしているが、監視の行き届かない通貨だけに、専門家はさまざまなリスクを警戒している。
米シカゴ・オプション取引所(CBOE)を運営するCBOEグローバルマーケッツの先物取引所が10日にビットコイン先物を上場するのに続き、18日には先物取引所大手CMEグループでも取引が始まる。来年は米ナスダックもこの輪に加わる見通しだ。
CBOEやCME、ナスダックの取引環境は厳しく管理されているが、ビットコイン現物を扱う取引所は、初歩的な監視体制さえ欠いているのが実情だ。
このため、市場操作の可能性や価格設定のミス、清算機関におけるシステミックリスクなど、数々の不安がつきまとう。
ビットコイン価格は今年に入って10倍以上に高騰し、金融関係者の多くはバブルだと見ている。
コンサルタント会社ジョン・J・ロージアン・アンド・カンパニーのジョン・ロージアン最高経営責任者(CEO)は「ビットコインはとてもユニークで、永遠に上昇を続け、買った人はだれでも儲かるのかもしれない。素晴らしいね。だが私はこの業界が結構長いから、そんなにうまい話はないのを知っている」と言う。
ビットコインは銀行や政府の承認なしに世界中を移動できるが、それが諸刃の剣になると見るのは、フィデッサのディレクター、スティーブ・グロブ氏。「何の後ろ盾もない。明日、だれもが突然ビットコインは無価値だと思ったら、無価値になる。みなさんはそのことを、ちゃんと考えてみたことがあるのだろうか」
伝統的な銀行は、いまだにビットコイン取引所を信用していない。ウェルズ・ファーゴは今年、ビットフィネックスという取引所の送金処理を中止し、顧客は特別な手続きを踏まなければ口座からドルを引き出せなくなった。
それでも個人投資家からハイフリークエンシー(超高速取引)業者に至るまで、続々とビットコイン投資に新規参入している。
仮想通貨ファンド、ガロワ・キャピタルの共同創設者であるケビン・ゾー氏は、仮に先物市場の規模が現物市場を上回るようなら、現物価格はこれまで以上に操作されやすくなると指摘。「以前にもビットコイン先物の決済日直前に相場が高値や安値をつけ、直後に戻るといった問題があった」と語った。
<雪崩のリスク>
ロージアン氏によると、取引量が増えればビットコイン取引所の技術的な頑健性も問題になりそうだ。「複数の取引所間でサヤを抜こうとする超高速取引的な手法」が特に危ないという。
CBOEのビットコイン先物で価格設定に使われるジェミニ取引所と、CMEの同先物指数に反映される4つの取引所のうちの2つであるGDAXおよびクラケンは、いずれも過去にシステム障害を起こしている。
インタラクティブ・ブローカーズ・グループのトーマス・ピーターフィ最高経営責任者(CEO)は、ビットコインの不安定さが清算機関にもリスクをもたらしかねないと指摘する。
ビットコインが乱高下し、小規模なブローカーが追加証拠金を払えなくなった場合、清算機関はそのポジションを受け継がざるを得ない。それが相場変動に拍車をかけ、他のブローカーも追加証拠金を払えなくなるという事態だ。
「ビットコインが何らかの馬鹿げた理由で急騰している時にそんなことが起こったら、雪崩が起こりかねない」とピーターフィ氏は言う。
こうした様々な不安が残るため、今のところビットコイン上場に距離を置いている先物取引所もある。米インターコンチネンタル取引所(ICE)のジェフ・スプレッチャーCEOは今週、ビットコイン先物の上場を見送っていることについて「透明性が確保されていない多くの取引所で算出される指数」を扱うのは適切でないと判断した、と説明した。
(John McCrank and Anna Irrera記者)

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