狂乱のビットコインが抱える「構造的リスク」

『アフター・ビットコイン』著者の警鐘

12月に入り、ビットコインの価格が1BTC=2万ドルや1BTC=200万円まで暴騰したことで、にわかに「ビットコインはバブルか否か?」という論争が起きている。「問題はバブルか否かではなく、いつはじけるかだ」とする論調もある。

「バブルかバブルでないかは、破裂してみなければ分からない」とはよく言われることであり、ここでビットコインの現価格がバブルであるかどうかを断言することはできない。本稿では、ビットコインの仕組みを支える技術的な側面も踏まえて、様々な角度から考察してみたい。

「ビットコイン・バブル説」三つの根拠

ビットコイン・バブル説の第一の根拠は、ビットコインの価格上昇のペースがあまりにも急激であることだ。ドル建てでみると、ビットコインの価格は2017年初めには1,000ドル程度であったが、ここにきて1万7000ドルに達する価格がついている

つまり、1年足らずの間に17倍近く値上がりしたことになる。2016年初めには400ドル程度であったので、2年間では40倍以上の値上がりである。

2017年12月8日夕方時点のビットコイン価格推移をもとに作成

こうした急激な価格の上昇は、他の金融資産でもなかなか見られるものではなく、行き過ぎた価格の上昇を疑わせる根拠となっている。

第二の根拠が、こうした値上がりやそれによって利益を手にした人の話を聞いて、「ビットコインは儲かるらしい」という「シロウト筋」がビットコイン市場に参入してきていることである。つまり、「よく知らない人が買っている」相場になっているのだ。

こうした「にわかビットコイン投資家」の中には、ビットコインの仕組みについての十分な知識も持たず、値動きだけをみて市場に参加している人もいるようだ。そして、中には株式投資の経験もないままに、値動きの荒いビットコイン相場に参画しているというあぶなっかしい例も目立つ。

株式市場では、「素人が株式投資に乗り出してきた時が相場のピークであり、バブル崩壊の前兆である」という有名な格言がある。

第三には、「仮想通貨に投資しないと損だ」と言わんばかりの風潮が広がっていることだ。ビットコインでウン千万円を儲けたとか、「億り人(おくりびと)」(仮想通貨投資により1億円以上の資産を得た人のこと)が誕生したという話が飛び交い、「こんなに儲かるものをどうしてやらないのか」といったムードが蔓延してきている。

思えば、1990年前後の株式バブルのときにも、「株式投資でウン千万円儲けた」といった話が飛び交い、「道端に札束が落ちているのに、どうして拾わないのか(どうして株式投資をやらないのか)」と言われたものだった。そういう話を聞いてから、のこのこと相場に入って行った人が相当に痛い目にあったことは言うまでもない。

いったん値上がりが見込まれると、そこに参加することが合理的とみなされるようになる。そして実際に利益を手にする人が現れると、そのことが人々の射幸心をさらにあおる。というのが、バブルが拡大していく典型的なプロセスである。このあたりで、一度立ち止まって、冷静になってみた方がよいかもしれない。

 

チューリップ・バブルとの比較

ビットコイン・バブルの可能性を語るときに、よく引き合いに出されるのが、17世紀のオランダで発生した「チューリップ・バブル」である。これは、「世界最古のバブル」とも呼ばれており、チューリップ球根の価格が、本来の価格(数百円程度)から乖離して異常に高騰した事件を指す。

オランダ東インド会社の商人がトルコから持ち返ったチューリップが、異国情緒にあふれる珍しい花として珍重され、その球根1個に、当時のオランダ人の平均年収の5倍以上、家が1軒買えるほどの値段がついた。

このバブルは、1634年から値上がりが始まり、価格が徐々に上昇していった。そして1637年に入ってから価格の上昇が一段と急激なものになったあと、突然に何の前触れもなく価格が暴落して終了している。つまり、バブルが続いたのは、3年間という短い期間にすぎない。価格暴落には、特別な理由はなかったものとされている。

ビットコイン・バブルがこのチューリップ・バブルと同じように展開すると仮定してみよう。2年前からのビットコインの価格上昇をバブル期ととらえると、このバブルが続くのは、せいぜいあと1年程度ということになる。この通りの展開になるという確証はないが、いずれにしても注意が必要な時期が来ているとの見方は十分に可能である。

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