ミセス・ワタナベを誘うビットコイン先物
たまたま昨日、投資セミナーで講演の機会があった。主題は、2018年の見通しだったのだが、質疑応答ではビットコイン先物に質問が集中した。最近の通貨市場は膠着状態が多いので、仮想通貨先物は新鮮な投資対象に映るようだ。参加者の多くは外国為替証拠金(FX)個人投資家、いわゆるミセス・ワタナベだ。属性はまさに老若男女。おばあちゃんと孫ペアというリピーターもいる。後期高齢者の山ガール3人のグループも常連だ。
質問にはサーキットブレーカー、先物プレミアムなど専門用語が流れるように出てくる。当方も思わず大手町での機関投資家向けセミナモードに入ってしまう。CBOE(シカゴ・オプション取引所)のビットコイン先物のレバレッジは2倍超程度と話すと、物足りない表情を見せる。FXで10倍、20倍に慣れきっているからだ。既に高レバレッジでビットコイン売買が可能なので、先物上場のビットコイン相場への影響に特に強い関心を示す。
そして昨晩。NY市場オープニング前からヘッジファンドなどからの問い合わせが相次いだ。ビットコイン先物に対する日本市場の反応をチェックしているのだ。今や、ビットコイン主戦場が日本ということを痛感する。
上場初日は「取引所厳戒態勢」の中で、限られた投資家の、低レバレッジでの「お試し売買」だったので、取引量が極めて限定的な中での価格上昇となった。「試験管」のなかでの実験的売買のようなもので、まずは参加者同士、お手並み拝見というところか。
それでもヘッジファンドはビットコイン先物売買に関して臨戦態勢だ。特に先物価格とスポット価格の値差がかなりのプレミアムになっていることに注目している。ビットコイン市場の整備が進めば、この異常なプレミアムは徐々に平準化されるはずだ。その過程はヘッジファンドにとって裁定取引の絶好の機会となる。
このプレミアムは解消されないとの見方もある。ヘッジファンドが参入すれば空売りも増えるといわれるが、ビットコイン先物に限ってはまず買い先行の姿勢が感じられるからだ。急速に先物買いのストックが積み上がった時点で、一部売り手じまいが出始める。そこから空売りの仕掛けも増えていく、との見立てだ。
いずれにせよ、「本戦」は最大手シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)にビットコイン先物が上場される12月18日からだ。株・債券・外為・商品、どのセクターでも現物市場から先物市場が派生して、短期的価格変動は先物主導となった。ビットコインも例外ではなかろう。市場の整備が進めば、許容レバレッジも徐々に上がっていく。そこでいよいよ市場かく乱的なバブルの芽がジワリ頭をもたげることになろう。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
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