視点:ビットコインの「真価」はいくらか、リバタリアンの誤解=ロゴフ氏

視点:ビットコインの「真価」はいくらか、リバタリアンの誤解=ロゴフ氏
 12月28日、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、通貨の長い歴史において、政府が常にイノベーションを規制し、合法的にわが物にしてきたことを考えれば、ビットコインをはじめとする仮想通貨も同じ運命をたどる可能性が高いと指摘。写真はビットコイン相場のイメージ画。12月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)
ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
[東京 28日] - 通貨の長い歴史において、政府は常にイノベーションを規制し、合法的にわが物にしてきたと、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は指摘する。よって、ビットコインをはじめとする仮想通貨も同じ運命をたどる可能性が高いとみる。
同氏の見解は以下の通り。
<日本がビットコイン・バブルを助長か>
ビットコインの価値は、仮にその取引の全てをデビットカードやクレジットカードの取引のように当局側で把握できるならば、1万ドルよりもむしろ10ドルに近づくはずだ。
その意味では、日本の当局(金融庁)が仮想通貨取引所の登録制を導入したことは良いことだ。しかし、ビットコイン取引を合法化したことで、日本が海外の地下取引に対して資金洗浄の場を作り出してしまった可能性はある。また、ビットコインの最近の価格バブルにかなり寄与したのではないかと私は思う。
日本の当局関係者は、他の国々も日本と同じように対応すれば、合法的にビットコインを使用するためには登録が必要となるので問題はないと言うが、現実には近い将来そうはならないだろう。特に米国が、好まざる政府に対する金融制裁に深く関わっていることを考えればなおさらだ。
従って、最終的には日本も、他国からの要請で、このほぼ匿名の取引に使われる媒体に対して、より手厳しいスタンスを取らざるを得なくなるのではないかと思う。
<政府は勝つまでルールを変更できる>
マネーの過去、現在、未来を論じた自著(「現金の呪い」)で指摘した通り、通貨の長い歴史において、民間セクターがイノベーションを起こしても、やがて政府が規制し、合法的にわが物とすることが何度も繰り返されてきた。確実に同じことが暗号通貨でも起こる。
リバタリアン(自由至上主義者)たちは、ビットコインが全ての法定通貨を打ち負かすと考えているようだが、彼らは間違っている。通貨については、ルールを決めるのは政府であり、勝つまでルールを変えることができる。
<中銀がデジタル通貨を発行する可能性>
中銀版デジタル通貨は必然的な流れだ。実際、中銀の準備預金はすでに電子データであり、一種のデジタル通貨である。残されている疑問は、中銀がどれくらいリテール市場に浸透したいのかという程度の問題だ。
*本稿は、特集「2018年の視点」に掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
(編集:麻生祐司)
*ケネス・ロゴフ氏は、ハーバード大学教授(経済学、公共政策)。ニューヨーク連銀経済諮問委員。2001年から03年まで国際通貨基金(IMF)のチーフ・エコノミスト兼調査局長。10代からチェスの名人として世界的に知られ、国際チェス連盟から国際グランドマスター(最上位のタイトル)を授与されている。近著に「現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?」。カーメン・ラインハート氏との共著に「国家は破綻する 金融危機の800年」。
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