秋葉原でマイニングブームの兆しが見えたのは5月下旬のこと。それまでグラフィックスカード関連で目立っていたのは、3月11日に登場したNVIDIAのGPU「GeForce GTX 1080 Ti」だ。ハイエンド系で2016年から主流であり続けているGTX 1080/1070の上位にあたるモデルで、搭載カードは税込み価格10万5000円〜11万円弱。発売からしばらく、このクラスでは異例なほど売れ、品薄傾向が続いた。
背景にはゲーム以外の需要があった。「GeForce TITAN Xの後継として、演算処理用に研究目的で買われていく法人さんが多いんですよ。SLIを組む人も多くて、複数枚が一気に売れることもザラです」(TSUKUMO eX.、当時)。
枯渇感は各社から独自クーラーモデルが売り出されるようになった4月ごろから薄らいでいった。ちょうどそのタイミングで登場したのが、AMDの新世代GPU「Radeon RX 580/570/560/550」だ。
しかし、当初は大きな反響はなかった。RX 580/570は前世代であるRX 480/470の仕様を踏襲してクロック数やバンド幅を強化した設計で、市場からはマイナーチェンジ的な存在と軽視されていた感がある。むしろ、エントリーラインとして4年ぶりの後継機種となるRX 550搭載カードの方が注目されていたくらいだ。なお、一歩遅れて登場したRX 560は価格帯がRX 550に近く、登場時から陰に隠れていた。
当時、某ショップが「ほとんど前のRX 400世代のリネームですから新鮮味はないですよね。その分、AMDでよくあるドライバの未成熟さを心配しないでいいのは利点ですけど」と素っ気なく話していたのを覚えている。
エントリー以上に目立たなかったRadeon RX 580/570カード。それが血眼になって探される存在になるまでには一カ月の間があった。
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