いつの間にかSBIグループは仮想通貨/ブロックチェーン企業になっていた

SBIホールディングスが、急速に仮想通貨とブロックチェーン関連の業務を次々に立ち上げている。気づけば、一大仮想通貨/ブロックチェーン企業グループの様相だ。

分野は、仮想通貨の取引所の運営にとどまらず、マイニング(採掘)、ICO(Inicial Coin Offering)のプラットフォーム、仮想通貨デリバティブ市場の創設、仮想通貨ヘッジファンドの運営と挑戦的だ。

北尾吉孝社長は2017年11月30日のプレゼンテーションの中で、「仮想通貨を健全なものとして育てていく。そのために何をすべきかという視点で事業を拡大している」と述べている。SBIグループのおもな仮想通貨/ブロックチェーン関連事業を見てみよう。

SBI仮想通貨関連事業

SBIグループが手がける主な仮想通貨関連事業

制作:小島寛明

世界2カ所で行うSBIの「仮想通貨マイニング」

仮想通貨の取引は一定の時間ごとに、ブロックチェーン上の台帳に記録される。この記録作業には、膨大な計算が必要となるため、高い計算能力を持つコンピューターと、電力の確保が必要となる。協力すると、対価として仮想通貨が支払われる。こうした一連の作業はマイニングと呼ばれ、日本でもGMOインターネットや、DMM.comなどが参入を決めている。

SBIグループでマイニングを手がけるのは、SBI Crypto社だ。背景は、マイニングに携わるプレーヤーが中国に集中している点だという。北尾氏はプレゼンテーションの中で、次のように述べている。

中国にマイニングが偏在している。中国だけで、マイニング活動の6割以上を占めている。なんでこんなことができたかというと、中国の電力料金が安かったんです。産業用で、政策的に特別に安くしてもらった。それで、こういう形になった。

マイニング事業は、コンピューターで膨大な計算を処理することから、電気料金の安い国・地域で実施する必要がある。そして、発熱するコンピューターを効率よく冷やすため、寒冷地に拠点を設置することも重要な条件とされる。GMOインターネットは2017年12月20日、北欧にマイニングセンターを設けたと発表している。SBIグループはいまのところ、マイニングについて詳細を明らかにしていない。

北尾氏は「マイニングは世界の2カ所でやります。GMOが発表しているよりも、早い段階で始めている。もっと安い、びっくりするような国でやります」と、ライバル企業への対抗意識を隠さない。

mining farm

仮想通貨のマイニングには膨大な電力を使用する。

Shutterstock

Ripple社と進める「ブロックチェーン送金」

SBIグループと、仮想通貨で知られるアメリカのRipple社が2016年5月、SBI Ripple Asiaを設立した。ブロックチェーン技術を活用する次世代の送金インフラの構築を進めている。SBIグループが事務局を務める「内外為替一元化コンソーシアム」には、メガバンク3行、ゆうちょ銀行を含め60行以上の金融機関が参加している。韓国の銀行との間で、国際送金の実験も進めている。

イギリスのWirex社とSBIホールディングスが、合弁会社を設立。アジア地域を対象に、仮想通貨をVISAのネットワークで利用できる決済サービスの提供を進める。「Wirexカード」を通じて、世界中のVISAの加盟店、ATMなどで、決済が可能になるという。

SBI CapitalBase社で「ICO」にも取り組み

SBIキャピタルベース社設立のリリース文。

SBIキャピタルベース社設立のリリース文。2017年10月12日付けで配信された。

企業などが仮想通貨で資金調達するICOについても、様々な取り組みが進む。SBI CapitalBase社は、ベンチャー企業や中小企業を対象に、2018年春ごろからICOによる資金調達をサポートするという。モーニングスター社は、ICOの格付けを始めている。

準備を進める「仮想通貨取引所」開設

SBIバーチャルカレンシーズの公式サイト

SBIバーチャルカレンシーズの公式サイト。2017年12月22日付けで一般の口座開設受付は延期している。

SBIバーチャルカレンシーズ社が、仮想通貨の取引所の開設を準備している。同社は、2017年9月の時点で、仮想通貨交換業者として金融庁に登録しているが、「設備の増強、ウォレットの安全対策に関して十分な確信を持った段階で開設する」として、いまのところ業務を始めていない。香港でも、仮想通貨の取引所Digital Asset Exchange(仮称)の開設を準備している。

「仮想通貨ヘッジファンド」組成への動きも

アメリカの運用会社CoVenture Holding Company(CV社)と、CV社が設立する仮想通貨ファンドの運営会社に出資。SBIホールディングスは「仮想通貨を新たな戦略的投資対象としてファンドの組成・運営を行う予定」としている。

「仮想通貨デリバティブ(金融派生商品)」も参入意向

アメリカのFinTechベンチャー企業Bcause社に出資。仮想通貨のデリバティブ商品の提供を進めている。


仮想通貨に関連する領域への急速な事業拡大に、悩みもある。最近の、仮想通貨の取引価格の乱高下だ。仮想通貨の価格が急落すると、SBIホールディングスの株価も「仮想通貨関連株」として、値を下げることがある。広報担当者は「我々はあくまでも金融サービスグループで、仮想通貨関連株というのはちょっと違うと思うんですが……」と困惑気味だ。

(文・小島寛明)

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