補償・対応「検討中」繰り返す コインチェック会見
仮想通貨取引所大手のコインチェックは26日夜、同日午後に日本円にして約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正送金された件について記者会見を開いた。流出した顧客資産の補償や仮想通貨の入出金の再開メドを含めた今後の対応について大塚雄介・最高執行責任者(COO)は「検討中」と繰り返した。大塚COOに加え、和田晃一良社長、顧問弁護士の堀天子氏が出席した。主な質疑応答は以下の通り。
――NEMが消失した経緯について説明を。
「26日の午前3時にコインチェックのNEMアドレスから5億2300万NEMが送金されていた。検知した時点のレートは日本円にして580億円。午前11時25分にNEM残高が異常に減っていることを検知し、午後4時すぎに日本円を含む全ての通貨の出金を一時停止。ビットコイン以外の全ての通貨の売買も停止した。金融庁や警視庁に報告済みで、NEM財団やNEMを取り扱う国内外の取引所と連携して、売買停止の要請をしている」
――顧客資産の補償を考えているのか。
「流出したNEMについては補償を含めて検討している。まずは顧客保護を最優先に対応している。補償する財務的な余裕についても精査中だ。顧客にできるだけご迷惑をかけることがないように検討している」
――流出の原因はハッキングとみているのか。
「原因を調べているところだ。怪しいメールなどが届いている事実はない。ハッキングの可能性も含めて確認中だ。ネム以外の通貨については、ハッキングを確認できていない」
――流出したNEMはどのように管理していたのか。
「(ネットに常時つながっている)ホットウォレットに入っていた。(ネットを遮断した)コールドウォレットでの管理はシステム的に難易度が高く、対応できていなかった。技術的な難しさと人材不足が原因。開発に着手してきたが、今回の事象までに間に合わなかった」
――一部の機能停止しているが、いつ再開するのか。
「安全に顧客に(サービスを)提供できることが確認でき次第なので、今のところ未定。メドはたっていない」
――いま出金を停止している顧客の資産は分別管理されているはずだ。顧客に全額戻るのか。
「その点については、NEMの補償も含めて対応方法を検討中。守られるか確証はない」
――コインチェックは金融庁による仮想通貨交換業登録を完了していない。セキュリティーの甘さが原因ではないのか。
「そこではない。なぜかはお答えできないが、セキュリティーが甘いからという理由ではない」
――NEMの残高が大きく減った場合、警告シグナルは出ないのか。
「アラートはあるが、気付くまで8時間以上かかった」
――流出したNEMの補償についてどのような具体策があるのか。
「内容を含めて、検討している」
――なぜコインチェックが狙われたのか。セキュリティーが他社に比べて甘かったという認識は。
「そういった認識はない。セキュリティーは高いという認識だ」
――(秘密鍵を分散管理する)マルチシグで保管していなかったのか。
「やっていなかった。結果的にこうした事態を引き起こした」
――セキュリティーが甘かったといわれても仕方ないのでは。
「顧客から資産を預かる立場としてセキュリティーでやれることは全部やる。やれることを全て、できる限りやっていた。マルチシグの対応予定はあったが、他に優先すべき事象があり、いつという見通しがついていなかった」
――顧客はコインチェックに資産を預けていることが不安になっている。出金を再開しないのはなぜか。
「どういう対処をしたほうがいいか、検討したい」
――今後、企業への救済要請や資本提携などの可能性は。
「まだそこまでの議論になっていない。選択肢のひとつにはあるかもしれない。現時点ではそうした提案はきていない」
――手元の現預金はいくらあるのか。
「具体的な数字を確認中。580億円を返せるかどうかも含めて検討している」
――NEMの管理に携わるNEM財団のマルチシグ対応をすべきだとの通知を無視して経営を続けたことに対する責任は感じないのか。
「やらなければならないという認識はあった」
――口座数や取引高を開示すべきでは。
「株主と相談して決めたい」
仮想通貨とは紙幣や硬貨といった実物がなく、インターネット上でやり取りするお金を指す。専門の取引所を通じてドルや円などの通貨と交換できる。代表的な仮想通貨としてビットコインがある