「仮想通貨天国」日本、実は穴だらけだった

コインチェック事件で分かった

問題が続く仮想通貨

これまでも何回か、ビットコインをはじめとした仮想通貨について、その問題点を解説してきた。予想していたことだが、先日もビットコインが急落した。

今回は、出川哲郎の派手なコマーシャルで有名な、日本の大手仮想通貨取引所コインチェックがハッキングされ、信頼性が現在の金融インフラよりも高いといわれたブロックチェーンに基づくシステムから、約580憶円分が引き出しされるという事件が起こった。

金額でいうと、2014年に起こったマウントゴックス事件の約470億円分を上回る日本の仮想通貨史上、最大の事件である。

そもそも、SWIFTなどのネットワークだけでなく、新興の仮想通貨取引所へもハッキングは世界的に行われていた。昨年12月には韓国第2位の仮想通貨取引所ユーコインがハッキングされ破綻した。日本も今年はハッキング(サイバー攻撃)があるのではと予想されていた。

筆者も今まで、この「現代ビジネス」で、仮想通貨・ブロックチェーンの仕組みについて、『「仮想通貨」は通貨ではない、ましてや金融商品ですらない』(5月10日公開)をはじめ、たびたび誤解や問題点を指摘し、警鐘を鳴らしてきた。

 

コインチェックの事件の特異性

1月26日にコインチェックのシステムが不正アクセス(ハッキング)され、顧客の仮想通貨の一つNEM(ネム)のほぼすべてが強奪された。この部分は、銀行の口座がハッキングされて、おカネを引き出されるのと同様である。

まずは、サイバーセキュリティが問題視される。一般的に仮想通貨取引所のシステム開発は予算が少ない傾向がある。東京証券取引所は約250億円、仮想通貨取引所は5億~10億円程度とされ、必然的にセキュリティも甘くなったとみられる。

そもそも、金融庁は、改正資金決済法によって、仮想通貨取引所(仮想通貨登録業者)の登録制を導入していた。その締め切りは昨年9月末であり、現在16業者が登録されている。しかし、このコインチェックは未登録業者であった。

コインチェック自体は「申請中」としており、「みなし業者」という形で業務を行っていた。通常の場合、締め切りから2か月で登録されるはずであった。もう1月末であり、長すぎる。何らかの問題を抱えていた可能性は否定できない。

金融庁は、事件発覚後、29日にコインチェックに業務改善命令を出し、27日には全取引所に管理体制など再点検などを指示した。

さらに、このコインチェックはネムを保有していた約26万人「全員」に日本円で返金すると発表している。この約580憶円(相場変動あり)を現金(含む預金)と想定されるが、払えるのであろうか。

自社の資産で払えるとしているが、コインチェックの資本金は9200万円である。資産保全(分別管理の義務)もあり、お客様の預り金をそのような用途に使用はしないと思うが。それでは支払いの原資はどこに求めるのであろうか。

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