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不正流出の「NEM」、実は安全対策が容易-日本中心に高い人気

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The logo for cryptocurrency exchange Coincheck Inc. is displayed on the company's Bitcoin Wallet app.

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Photographer: Akio Kon/Bloomberg

不正なアクセスによる流出問題で注目度の高まった仮想通貨「NEM(ネム)」。580億円相当という多額の盗難となったことで仮想通貨取引の安全性に対する懸念が高まっているが、専門家からはネムという通貨自体のセキュリティーに対する意識は高く、他の通貨と比べると対策を講じやすいとの声が上がっている。

  ネムの取引量が世界最大の仮想通貨取引所「Zaif(ザイフ)」を運営するテックビューロの朝山貴生社長は電話取材で、ネムには、秘密鍵を分散して管理する「マルチシグ(マルチシグネチャー)」と呼ばれる技術が付加的な機能としてではなく、基本規格であるプロトコルに組み込まれていると指摘。「他の通貨と比べるとセキュリティー対策が容易で、非常によくできた通貨」と話した。

  コインチェックの和田晃一良社長は1月27日の会見で、技術的な難しさや人材不足があり、マルチシグなどのセキュリティー対策が後回しになっていたと話した。ネムの普及を目指す国際非営利団体ネム財団のロン・ウォン代表は電話取材で、「家とドアと鍵があったとしてドアに鍵をかけなければ泥棒が入ってきてしまう。われわれとしては家とドアと鍵を備えていたが、コインチェックはドアをロックするための鍵を使っていなかった」と述べた。

  「コインチェックの社長はマルチシグを実装することの難しさが理由だと説明した。しかし、実際にはそれほど難しくはなく、むしろ市場で流通する全ての仮想通貨の中でもネムは最も簡単に実装できる通貨だ」とし、流出の原因は取引所の運用上の問題によるものとの見解を示した。

  ネムは2014年に開発され「ビットコイン」など他の仮想通貨に比べ後発。そのために新しい暗号や署名の仕組みを採用しており、分散型ネットワーク「ブロックチェーン」の技術を応用しやすい通貨となっている。コインマーケットキャップのデータによると、ネムの時価総額は約70億ドル(7680億円)と仮想通貨の中で10位の規模。特に日本やロシアなどで人気を集めている。

容易な言語で作成

  ブロックチェーン推進協会の杉井靖典副代表は、ネムは「インターネットの開発者なら誰でも使えるような容易なプログラム言語でつくられている」ことが魅力となり、技術者を中心に支持されていると話す。さらに、日本国内でネムの人気が高い背景には、ネム財団の理事も務めておりカリスマとして知られるテックビューローの朝山氏の存在もあると述べた。

  ネム財団は1日、ハッキングによってコインチェックから盗まれたネムが保管されているウォレット(口座)を特定し追跡していると発表。犯人のウォレットのアドレスが特定できたため、資金の移動をモニターしているという。杉井氏は、事件発生後すぐに有志の開発者が開発した追跡技術をネム財団が正式採用した点を評価。「このスピード感、対応力でむしろ評価が上がるだろう」とみている。

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