コラム:仮想通貨を警戒する銀行の「ダブルスタンダード」
Christopher Thompson
[ロンドン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 銀行がビットコインに抱く警戒感からは、仮想通貨の取り扱いを巡って「ダブルスタンダード」が存在することを示している。ロイズ・バンキング・グループは、英国の顧客がクレジットカードで仮想通貨を購入することを禁止した。
借り手が損失を出さないように守る姿勢は賢明であり、規制当局から将来罰金支払いを命じられたくないという気持ちも理にかなっている。しかし一方、そうした態度に接すると、金融市場が積極的にビットコイン取引を受け入れようとしている動きに対して、この上ない違和感を覚えてしまう。
クレジットカードを利用したビットコイン購入を禁止したのは、ロイズが初めてではない。報道によると、いくつかの米銀も同様の措置を講じている。
ただロイズは、顧客保護の観点で決断した。なぜなら昨年10倍以上も跳ね上がったビットコイン価格は、これまでに最高値の1万9000ドル超の半分未満にまで落ち込んでいるからだ。
昨年MBNA買収で英国のクレジットカード債権におけるシェアを15%から約25%まで高めたロイズにとって、不良債権問題の発生を心配することは当然だ。英金融行動監視機構(FCA)は既に、規制と投資家保護態勢がまだ整備されていない仮想通貨への投資リスクについて警告を発した。
たがロイズの方針決定を正当化する理由は、仮想通貨の投機に関して考え方に混乱が生じている現実も露呈している。顧客は、サッカーの試合や競馬、選挙などで賭けをすることは禁じられていない。小口顧客を心配することと、シカゴの取引所が昨年ビットコイン先物を上場したような市場の熱意にも矛盾がある。
ビットコインが人々を引き付ける理由の1つは、現在の法定通貨の代替的存在とみなされていることだ。
しかし匿名性という特徴は、不正に得た資金を洗浄したい犯罪者には都合の良い道具となり、自分たちのシステムを経由する資金の動きを監視する責任を負う銀行にとっては重大な懸念要素となる。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)によると、銀行業界は2008年の金融危機以降、不適切な行為に絡んで総額で約3200億ドルもの罰金を支払ってきた。法令順守や顧客確認の態勢改善には数百億ドルを費やしている。
投資家の仮想通貨への関心が深まっていくとともに、銀行が投資家のために最善の行動を取ることの妥当性がなおさら強まっている。
●背景となるニュース
・ロイズ・バンキング・グループは5日、英紙の報道を認める形で顧客がクレジットカードでビットコインなどの仮想通貨を購入することを禁止すると発表した。
・禁止措置は、多額の損失を被る事態から顧客を守ることが狙い。ただし、デビットカードを使った仮想通貨購入は引き続き認められる。
・昨年12月にはCMEグループとCBOEグローバル・マーケッツが、ビットコインへの投資家の関心の高まりに乗じて、ビットコイン先物の取引を開始した。
・ビットコイン価格は昨年1000%強上がった後、今年になって40%前後も下落した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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