「NEMは世界一安全な仮想通貨だが……」 財団副代表インタビュー
仮想通貨NEM(ネム)の普及や情報発信に関わるNEM財団のジェフ・マクドナルド副代表は23日、日本経済新聞の取材に応じた。仮想通貨交換業者コインチェックで580億円相当のNEMが流出した問題について「流出した通貨の追跡を続けており、警察と協力して問題解決にあたる」と述べた。主なやりとりは以下の通り。
――コインチェックの通貨流出問題をどう受け止めるか。
「不幸で良くない出来事だった。流出後、財団は盗まれたネットワーク上のNEMに自動で目印を付け、追跡を続けている。世界の通貨交換業者と協力し、NEMの他通貨への交換を防ぐ。各国の警察当局とも連携して問題解決にあたる」
「今回の問題は交換業者のセキュリティが甘かったために起こった。NEMの技術を用いれば、(口座の暗証番号として要求される)『秘密鍵』を複数設定して引き出しを防ぐこともできた。個人的には、NEM自体は世界一安全な仮想通貨だと自負している」
――流出した通貨の一部は他通貨に交換され、ハッカーの手元から離れている。取り戻せないのか。
「犯人が誰なのかを含め、コメントすることは難しい。警察が対応を始めており、財団は必要な協力をするだけだ。ただ、通貨の追跡は全体としてはうまくいっている。ダークウェブ(闇サイト)上で通貨が交換されたとしてもその動きは把握できる」
――NEM財団とは、何をする組織なのか。
「世界に拠点を置き、NEMの技術の普及や促進を進めている。例えばスマートフォン向けのウォレット(電子財布)を作りたいエンジニアには技術的な支援をしている」
「NEM技術はベネズエラ政府が発行する仮想通貨『ペトロ』に使われているほか、フィリピンのコンビニではポイントサービスのシステムとしても用いられる」
「単なる投機対象になりがちな他の仮想通貨との最大の違いは既に幅広くビジネスに使われていることだ」
――通貨流出問題以降、仮想通貨投資への安全性への懸念が広がっている。
「ユーザーに対しては、交換業者を通じて通貨を手に入れた後は、自分のウォレットに移しオフライン保管することを勧めたい。こうすることでハッキングのリスクを遮断することができる。どの交換業者が安全かについては、コメントする立場ではないと思っている」
(聞き手は植出勇輝)
仮想通貨とは紙幣や硬貨といった実物がなく、インターネット上でやり取りするお金を指す。専門の取引所を通じてドルや円などの通貨と交換できる。代表的な仮想通貨としてビットコインがある