規律問われる仮想通貨業界
激しい価格変動のほかにもさまざまなリスクや課題を抱える仮想通貨の交換事業者が、新たに業界統一の自主規制団体を立ち上げる見通しになった。相次ぐ不祥事の再発を防ぐ自主ルールを早期に整え、取引の安全性や透明性に責任を持つ取り組みが急務だ。
今春の統合を検討しているのは日本ブロックチェーン協会と日本仮想通貨事業者協会。大手交換事業者がそれぞれに加盟している。
昨春施行した改正資金決済法は個別の交換事業者に対して、金融庁審査に基づく登録制を導入するとともに、登録事業者による自主規制団体の設立を想定している。
法律や金融庁の規制だけでは対応しきれない詳細なルールを民間が定め、自律的に顧客保護を高める狙いだ。金融庁が認定する自主規制団体になれば、加盟社がルールに違反した場合の罰則規定も設けられる。だがこれまで2つの業界団体が並立し、いずれも金融庁の承認を得られていなかった。
両団体の主導権争いが収束するきっかけになったのが、ずさんな安全管理を原因とする大手事業者コインチェック(東京・渋谷)の巨額仮想通貨流出事件だった。
コインチェックが両団体の会員だったという事実を踏まえれば、既存の業界団体の単なる一本化では意味がない。
新団体の課題は山積している。外部からのハッキングを防ぐシステムの安全対策強化をはじめ、インサイダー取引規制や資金洗浄、反社会的勢力の排除など犯罪対策も含まれる。
急拡大する仮想通貨を使った資金調達(ICO)のルールもいる。これまでおろそかにしてきた顧客への情報やリスク開示の徹底も欠かせない。ネット広告などを通じて横行する、過度に射幸心をあおるような宣伝は慎むべきだ。
誕生間もない業界のイメージは失墜した。半面、手軽な「投機」の手段として投資家の参入は続いている。新団体には、強い危機感をもって実効性のあるルール作りに臨んでほしい。