仮想通貨業界、4月に新団体発足 ICO基準など整備
仮想通貨の2つの業界団体が新たな業界団体として一般社団法人「仮想通貨交換業協会(仮称)」を4月に発足させる。金融庁と連携を取りながら安全基準や仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)について自主規制ルールづくりを急ぐ。コインチェック(東京・渋谷)の仮想通貨「NEM(ネム)」の不正流出事件で傷ついた業界の信頼回復をめざす。
2017年4月に施行した改正資金決済法で登録を受けた交換会社16社が新団体設立で3月1日に合意した。会長に就く日本仮想通貨事業者協会(JCBA)の奥山泰全会長(マネーパートナーズ社長)は2日に開いた記者会見で「仮想通貨業界を挙げて自主規制に取り組みたい」と述べた。
これまではJCBAと交換会社ビットフライヤー(東京・港)が中心となって設立した日本ブロックチェーン協会(JBA)が併存。業界全体に効力を及ぼす自主規制ルールがなかった。新団体は実効性のある自主規制ルールづくりを進める。
利用者の関心が高いのが安全基準の策定だ。コインチェックはセキュリティー対策が甘かったことで、ハッカーに580億円相当のNEMを盗まれた。副会長に就くJBAの加納裕三代表理事(ビットフライヤー社長)は「運用を含めてセキュリティー基準をつくる必要がある」と述べた。
新団体が認定自主規制団体と認められれば、交換会社が扱うことができる仮想通貨のリストをつくることができる。世界に1500強ある仮想通貨には詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)が疑われるものが混じっており、その排除をめざす。ICOで発行するトークンについてもガイドラインをつくる考えだ。
新団体は登録済みの交換会社だけでなく、登録をめざしながら営業する「みなし業者」に加盟を募る。証券会社で構成する日本証券業協会のように加盟会社に処分などの強制力を発揮する自主規制団体の機能も備える。
英国でも2月に自主規制団体「クリプトUK」が発足。コインベースやイートロなど欧米7社が参加し、健全な取引環境を整えるため行動規範の策定をすすめている。
仮想通貨とは紙幣や硬貨といった実物がなく、インターネット上でやり取りするお金を指す。専門の取引所を通じてドルや円などの通貨と交換できる。代表的な仮想通貨としてビットコインがある