SECの仮想通貨規制、商品から証券へ
米SEC(証券取引委員会)が仮想通貨を「証券」とみなし、取引所も「証券取引所」としてSECへの登録を義務付ける方針を明らかにした。これまではビットコインが米商品先物取引所に上場される過程で米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下にあったので、これは劇的な変化である。
筆者は商品の「金」を上場投資信託(ETF)として証券化して米証券取引所に上場する過程に直接関与して、実際にSEC詣でを繰り返した経験がある。SEC側は特に市場の流動性、値決めに重要な役割を果たすマーケットメーカーの数や資質などを細かく問うてきた。分厚い目論見書(プロスぺクタス)も、内容の多くは「ロンドン金市場の売買システム」など金の教科書的な説明による「リスク開示」であった。
今回の仮想通貨規制に当たって、SECは声明文で「オンラインの売買プラットホームの多くが取引所と名乗り、あたかもSECに登録して規制されているかのような誤った印象を与えていることを、SECのスタッフは懸念していた」と述べている。
これまで管轄してきたCFTCは不祥事が発生してからでないと動けなかったが、SECは不祥事の発生予防に動くために監督権を持つ。この発表により、ビットコイン価格も下落しているが、長期的に見れば、厳しいSECのお墨付きを得ることで機関投資家は参入しやすくなり、市場の良質な流動性が増える可能性がある。
事実、金ETFも年金基金などの参入で、時価総額が一時はSP500連動ETFをしのぐほどに「大化け」した。仮想通貨の価格乱高下も、流動性が増えれば裁定取引が活発になり、割高な取引所では売られ、割安な取引所では買われ、長期的に平準化されよう。ただし、証券と同じ土俵に立てば、現在、株式・債券・為替市場で顕著な高ボラティリティー現象の洗礼を受けることは避けがたい。仮想通貨が新たな資産クラスとして定着するか否か。正念場である。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org