金融庁の行政処分が示した仮想通貨交換業者の「惨状」
金融庁が立ち入り検査などの結果に基づき2018年3月8日に実施した行政処分は、国内の仮想通貨交換業者の「惨状」を示すものだった。顧客から預かった仮想通貨を幹部が私的に流用していたビットステーションなど業務停止命令を受けた2社を含め、7社が行政処分を受けた。同庁は引き続き、まだ検査を実施していない業者への立ち入り検査を進める考えで、行政処分の対象はさらに広がる可能性がある。
7社のうち2社は、仮想通貨交換業の登録を受けた事業者だ。このうちテックビューロへの業務改善命令は、同社が仮想通貨交換所「Zaif(ザイフ)」でシステム障害や不正出金などの問題が頻繁に起きていることを踏まえたもの。顧客からの苦情が多い一方で、顧客への説明や再発防止策が不十分であることを問題視した。
もう1社のGMOコインへの業務改善命令では、システム障害が頻発しながら原因究明が不十分で、適切な再発防止策が講じられていないことを指摘した。
2度目の業務改善命令となるコインチェックに対し、金融庁は同命令の中で「経営体制の抜本的な見直し」を求めた。1回目の命令で求めた「責任の所在の明確化」よりも一歩踏み込んだ表現だ。
今回の業務改善命令はコインチェックに対し、経営体制の見直しに加えて「取り扱う仮想通貨の各種リスクの洗い出し」などを含めた業務改善計画を3月22日までに書面で提出するよう求めている。同庁はこの結果を踏まえ、現在はみなし業者であるコインチェックの登録申請について可否を判断するとみられる。
同庁はコインチェックへの検査を通じ、流出した仮想通貨を顧客に補償する前提となる分別管理の実施については確認済み。今後コインチェックは、顧客への補償と経営体制の見直し、取り扱う仮想通貨の再選定を同時並行で進めることになる。
金融庁は登録を受けていないみなし業者のうち、ビットステーション、ビットエクスプレス、来夢の3社が仮想通貨交換業の登録申請を取り下げたことを明らかにした。3社には内部管理体制が不十分と以前から指摘していたという。業務停止命令を受けたFSHOは、現時点で取り下げは申請していない。
同庁は事態の改善に向け、「仮想通貨交換業に関する検討会」を設置することを公表した。学識経験者や金融実務家などをメンバーとし、仮想通貨交換業の業界団体や関係省庁などをオブザーバーとする。金融庁は仮想通貨に関する制度のあり方を見直すべきかを含め、検討会で議論する考えだ。
(日経 xTECH/日経コンピュータ 浅川直輝)
[日経 xTECH 2018年3月8日掲載]