「新たな仮想通貨の『上場』を審査するのは誰なのか。仮想通貨交換所か、金融庁か、自主規制団体か。誰も審査の基準を示してくれない」。

 記者にそう苛立たしげに語ったのは、仮想通貨カルダノ(Cardano)の設計やソフト開発を手掛ける香港Input Output(IOHK)創業者CEO(最高経営責任者)、チャールズ・ホスキンソン氏だ。仮想通貨としての時価総額は約6400億円(2018年3月8日現在)で世界7位につける。

 ホスキンソン氏は、国内のいくつかの仮想通貨交換所から「カルダノを交換所で扱いたい」と上場の誘いがあったと明かす。同氏もカルダノの取り扱いを事業者や金融庁に働きかけてきたという。だが「コインチェック事件の後は、検討のスピードが明らかに落ちた」(同氏)うえ、上場の評価基準について業界の誰も明確に答えてくれず、袋小路に陥ったという。

 カルダノは評価のブレが激しい仮想通貨だ。2015年9月頃、カルダノプロジェクトに関わる国内組織が、日本で仮想通貨の販売(プレセール)を開始。だが、コインの価格上昇をあからさまにうたう販売手法に加え、プレセール後に当初予定通りに上場しなかったことから「詐欺コイン」との評価を受けることもあった。

 カルダノは2017年9月、アルトコインを積極的に取り扱うことで知られる米国Bittrexに上場。その後は中国Binanceや韓国Coinnestに上場した。

 ただし、現時点でも取引の合意形成に参加できるノードを制限している点で、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)のように誰もが取引や承認に参加できるパブリックチェーンではない。世界7位の時価総額に見合った決済やスマートコントラクトの実績があるとも言い難い。真っ当なコインと言えるか否か、評価が定まっていないのが現状だ。

自主規制団体、ようやく設立へ

 コインチェック流出事件や7社への行政処分を受け、国内の仮想通貨交換業への信頼は地に墜ちた。この信頼を回復させる重責を担うのが、ホスキンソン氏も言及していた「自主規制団体」である。

 仮想通貨交換業大手、マネーパートナーズの奥山泰全社長とbitFlyerの加納裕三社長は3月2日、2018年4月をメドに業界団体を新設することを明らかにした。金融庁から自主規制団体(認定資金決済事業者協会)として認定を受けることを目指す。認定を受ければ、加盟社へのペナルティー(罰則)を含めた実効性の高い自主規制を制定できるようになる。

 新設する自主規制団体が優先して手掛けるべき課題は2つある。1つはコインチェック事件の再発防止に向け、サイバー攻撃や内部犯行から顧客の資産を守るセキュリティ標準を策定すること。そしてもう1つは、交換所に上場できる仮想通貨を選定する基準やプロセスを整備することだ。