ここに述べられていることは、専門家の意見であり、必ずしもコインテレグラフの見解を必ずしも反映するものではありません。

 

 イスラエルは、技術革新の面でスタートアップ大国と一部では呼ばれてきた。イスラエルのベンチャーキャピタルの総投資額は、昨年には50億ドルを超えた。これは中国の年間総投資額のほぼ10%にあたる。USBフラッシュドライブやカーナビアプリのWaze、炭酸水メーカーのソーダストリームなど、数多くの人気のアプリやプラットフォーム、製品を世に出してきたイスラエルが、仮想通貨業界に足を踏み入れた。

 イスラエル最大銀行のハポアリム銀行は昨年、マイクロソフトと提携して「保証人登録プロセスを簡易化・迅速化」するブロックチェーン技術を利用したプラットフォームを開発した。イスラエル税関局は今年2月、仮想通貨を資産とみなし、資産売却益税を課す考えを示した。

 今年2月16日には、イスラエルをさらに一歩前進させる出来事が起きた。イスラエル最高裁判所がレウミ銀行に対し、仮想通貨ブローカーのビッツ・オブ・ゴールド社への仮想通貨取引制限を一時的に禁止する命令を下した。

 この臨時裁判所命令はすぐに多くの人から「先例を作るもの」として称賛されたが、今後、新たな展開を見せる余地がまだ十分にある。

 判決を下したアナット・バロン判事によると、この判決は「銀行口座を利用したあらゆる取引の具体的な特徴を分析する銀行の権利や、リスクを最小限に抑えるために措置を講じる銀行の権利を損なうことが目的ではない」。つまり、今のところ、透明性を最優先する仮想通貨ブローカーや仮想通貨取引所は合法とみなされる可能性が高いということだ。

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The Supreme Court of Israel in session (The times of Israel)

 ビッツ・オブ・ゴールド社のユバル・ロシュ設立者兼CEOはこの判決を妥当と受け止め、次のように述べた。

「当社では初めから規制を重要視していた。当初からビットコインの匿名性を問題視し、通貨サービス許可取得に取り組んだ。そして、13年の8月に許可を手に入れた」。

 この判決は、テルアビブ地方裁が、レウミ銀行に有利な判決を下した昨年12月から大きな進歩だ。レウミ銀行は、ビットコインがマネーロンダリング防止基準を満たすことができないため、ビッツ・オブ・ゴールド社へのサービスを拒否した。

 中央銀行であるイスラエル銀行が6月に仮想通貨取引所ビッツ・オブ・ゴールドを「賭博取引を支援するウェブサイト」に分類し、レウミ銀行はその分類を踏襲した。これはとくにイスラエルの弱点だ。イスラエルが国境内のバランスを乱すものに慎重なことが証明された。イスラエル当局は、人気のライドシェアアプリ、ウーバーのイスラエル進出も阻止している。

 ビッツ・オブ・ゴールド社の過去5年間の経営を検証後、バロン判事は、ビットコインが野放しの状態では違法行為が発生するというレウミ銀行側のそれまでの前提は、誤っていると判断した。
この判決に関連して、イスラエルのヘルツォーク、フォックス&ネーマン法律事務所のハイテク部門ジャイラ・ジヴァ主任は次のような意見を述べた。

 

「裁判所が根本的な問題に裁定を下さなかった点を重視すべきだ。レウミ銀行が仮想通貨取引に対して、銀行サービスを拒否する権利があるか否かという問題には未だに判断が下されていない。最終決定は保留された状態だが、今回の最高裁の判決は、とりわけイスラエルでの仮想通貨業界の急成長を後押しし、ハイテク業界と金融業界への追い風になると思われる。そう考えられる理由のひとつは、最高裁がビッツ・オブ・ゴールド社の経営の透明性と、いずれの法定にも違反していなかったことを明らかにしたことだ。言い換えると、イスラエルには現在、仮想通貨取引を直接規制する法的禁止事項は存在しないと最高裁が判断したということだ。イスラエルの規制機関がこの歴史的な判断に対してどのような反応を見せるのかはまだ分からない」。

 規制機関がどのような反応を見せようとも、イスラエルのブロックチェーン革新の進歩スピードが衰えていないことはすでに明らかだ。

 「あらゆる前途有望な新技術と同様、革新と採用を推進するためバランスの取れた政策を導入すれば、そのエコシステムにはたくさんの才能ある人材とビジネスが集まる。最良の政策的枠組みには学習アプローチを取ると良いだろう。起業家と機関は新しい技術がすべての関係者にどのような影響を及ぼすのかを深く理解でき、多くの人に有益な政策を打ち立てることができる。同時に、その代償と説明責任に関して市民を教育できる。イスラエルは常に、技術の進歩を強さとチャンスとしてとらえてきた。イスラエルはブロックチェーンの開発と応用分野をリードできる好位置にいる」と仮想通貨バンコールのガリア・ベナッティ共同設立者は語った。

 ブロックチェーン技術を利用した旅行関連スタートアップ、クール・カズン社のイタリー・ナグラーCEOによると、イスラエル人には基本的に、物事は変えられないし、変えるべきではないという認識が低い。ナグラーCEOはイスラエル市民だ。

 

「私たちイスラエル人は、物事は常に改良の余地があり、より効率的な対処方法があると考えるように育てられていると言ってもいい。このような小さな国に素晴らしい革新的な企業や個人が数多く存在する主な理由はそこにある。それはまた、イスラエル人がいち早くブロックチェーン技術や仮想通貨を採用した理由でもある。イスラエル人の多くは、ブロックチェーン技術と仮想通貨を多くの問題を解決する素晴らしい方法だと考えている。私たちの変化を「恐れない」気質と、優秀な人材と資金が比較的簡単に手に入る状況が、実行を可能にする。これが、過去数十年間、私たちが多くの業界で先駆者と専門家の立場を得ることができた理由だと私は思う」。

 

 これまで業界に具体的な規制はまったく存在しなかったが、起業家が独自のブロックチェーンプロジェクトを開始することを妨げることはなかった。イスラエルで設立されたバンコール社は初期に大規模ICOを実施した会社のひとつだ。わずか数分で1億5000万ドルを調達した。モノのインターネット(IoT)に着目したブロックチェーンソリューションのIOTA社は最近、テルアビブにオフィスを開設した。IOTA社は「テルアビブはしっかりした基盤をもつテックハブで、常にトップ10のスタートアップにランキングしている」と意見を述べた。

 上記の前向きな変化は、「取引の変動制」を理由に仮想通貨関連企業をテルアビブ証券取引所で取り扱わないという最近のイスラエル規制当局の決定と相容れない。

 イスラエルは、他国と共にブロックチェーンのエコシステムに参加していくつもりのようだが、まず、市場のグレーゾーンを制限し、最も有益な特性を伸ばせることを保証する努力が必要だ。