仮想通貨は通貨にあらず?G20の決定と世界の温度感はズレている

ラテンアメリカで増える仮想通貨取引
ベネズエラは国が発行

 皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。今回は仮想通貨の規制について、世界各国と日本の取り組みの違いを見てみようと思います。

 仮想通貨といえば、今年1月、日本の交換業社大手のコインチェック社が約580億円相当の仮想通貨を流出させた事件が記憶に新しいですが、本来はわれわれの暮らしをより便利にする目的で開発された新技術です。

 実際、ラテンアメリカ諸国では富裕層を中心に、仮想通貨の取引が存在感を増しています。なぜなら、こうした国々は先進国と比較すると、政治や経済状態が不安定で、極端な場合には、国家による個人財産没収やハイパーインフレに陥るリスクがあります。富裕層はこうしたトラブルから逃れるための手段を常に探していて、仮想通貨に目をつけています。

 ベネズエラでは、今年の2月に国が仮想通貨「ペトロ」を発行しました。これはベネズエラの豊富な原油資源を裏づけとしたもので、1ペトロ=原油1バレルの価値に相当します。ペトロで公共料金などを支払うこともできるようです。

 現在のベネズエラは、インフレ率が非常に高くなっており、買い物をする際に大量の紙幣を持ち歩く必要があるため、ペトロ導入によってこの不便さが解消されるとの見方もあります。

 その一方で、問題も指摘されています。例えば、政府はペトロの価値を「担保する」と言っていますが、石油とペトロの交換が政府によって「保証」されているわけではありません。また、ベネズエラの憲法は、埋蔵している原油を財政政策の保障として使用することを禁じており、ペトロがこれに抵触するとの声も上がっています。

 また、ペトロは仮想通貨のため、その匿名性により米国の経済制裁をかいくぐることができる可能性があります。

 ベネズエラだけでなく、ロシアやイラン、トルコといった国々も、国が仮想通貨を発行することを検討していると報じられていますが、その動機は米国の経済制裁を逃れることではないかとの見方があります。米ドルは「基軸通貨」として世界の金融システムを牛耳っているため、米国の経済制裁を受けてしまうと海外との金融取引に支障を来すためです。仮想通貨を使って、現在の金融システムの“外”で取引できることは、国によっては大変魅力的だと思われます。

 一方で、仮想通貨には乗り越えなければならない問題もいくつかあります。