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Photographer: Andrey Rudakov/Bloomberg
Cojp

ドイツ銀の元外為ディーラー、日本で仮想通貨業界参入へ

更新日時
  • 野村、ドイツ証、MUFGなどからリスク管理の専門家など15人起用
  • 「規律ができれば市場は健全に」と大西氏-インタビュー

ドイツ銀行で外国為替営業部長を務めた大西知生氏(50)が、日本で仮想通貨交換業務に参入する。これまでに大手金融機関から法令順守体制の専門家など15人を起用した。国内では仮想通貨の外部流出が発覚後、経営体制の強化が喫緊の課題となっている。

  大西氏は昨年12月にドイツ銀を退社、FXcoin(東京・目黒区)を設立した。ドイツ証券、野村ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループ、英HSBCホールディングスなどからコンプライアンスやリスク管理、マーケティング、セールスの専門家を起用、ビットコインなどの仮想通貨の交換業務開始に向け準備を進めている。

  日本は2014年のマウントゴックス、今年のコインチェックとこれまで2度にわたり仮想通貨の大規模不正流出を経験しているが依然として世界最大の仮想通貨市場の一つであり、投機対象として、また決済手段として個人投資家の関心は高い。金融庁は仮想通貨交換業者への監視を強化、各社に立ち入り検査を実施するなど厳格な運用を求めている。

  東京外国為替市場委員会の副議長として「コード・オブ・コンダクト」(行動規範)の作成に携わった大西氏はブルームバーグのインタビューに応じ、「黎明(れいめい)期ゆえの混乱で、投資家や業者の目が厳しくなり、意識が高まっていく」と述べた。その上で「規律ができれば市場は健全になるだろう」との見通しを示した。

人員倍増も

  FXcoinでは、外為機関投資家営業を率いていた寺田八大氏など6人がドイツ銀出身者となっている。金融庁から登録認可を受けた後、速やかに業務を開始したい考えだ。大西社長によれば、早ければ18年中に、セールスやカスタマーサポート、アナリストやエコノミストなどを採用し陣容を倍増する計画という。ただ、コインチェック事件後、金融庁に新たに登録認可を受けた業者はまだ出ていない。

  仮想通貨市場をめぐっては進出を目指す企業がある一方で、政府が規制強化に出るなどさまざまな動きが出ている。マネックスグループは3日、仮想通貨の流出事件を起こしたコインチェックの買収を検討していると明らかにしている。一方、金融庁は世界最大規模の取引量を持つバイナンスに対し、無登録での日本居住者向けの業務を停止するよう警告した。

機関投資家も視野

  FXcoinは日本で国内の富裕層を含む個人に照準を合わせビジネスを展開していきたい考えだ。その後は、国内の生損保、年金、銀行や資産運用会社などの機関投資家にもサービスを提供することを検討しているという。

  大西社長は、機関投資家の仮想通貨への投資について「意欲はある」とみている。マイナス金利導入の影響もあり、「常に運用先を探していて、流動性があってちゃんとしたものであれば投資先として考えていいと思っている」と語った。

  同氏は慶応大学卒業後、1990年に東京銀行に入行した。2013年から東京外為委の副議長を務めていた。

英語記事:Deutsche Bank Veteran Currency Dealer to Enter Crypto Industry

(第1段落を加筆したほか、構成を変更しました.)
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