ヤフー2017通期は増収減益、川邊新社長が語った「仮想通貨」とモバイル決済「200億円投資」

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ヤフーは2018年4月27日、2017年度の決算会見を開いた。売上高は8971億円(前年度比5.1%増)、営業利益が1858億円(前年度比-3.2%減)と、増収減益となった。

会見で概略を語ったのは、6月の社長に就任する現・副社長の川邊健太郎氏。川邊氏は、減益の要因について、期初より発表していた「EC取扱高の最大化」(231億円)と「データドリブン化」(116億円)への投資のためと説明する。

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通期決算の増収は21期連続。足元は堅調に推移している。

こうした投資の結果、ECの流通総額は初の2兆円を突破(グループのアスクルとの合算)。メディア事業を中核とする広告の売上高も、初めて3000億円を超えた。

「KPI全般がおおむね好調な数字」(川邊氏)と、現時点のヤフーの事業の底堅さに自信を見せる。

その一方、記者の質問に対して競合状況は「競合見合いでは上からはテックジャイアント、下からはベンチャーたちがと“両バサミ”にあっている認識を強く持っている。名前は申し上げる立場にないが、どちらも気持ちのいい相手ではない」とも語り、時価総額2.5兆円企業の経営に対する一定の危機意識ものぞかせた。

2017年度の投資要素

2017年度の2つの投資要素。ECの売上最大化の投資は231億円、データドリブン化のコストは116億円。それぞれ計画よりは少ないながら、大きな投資といえる。

ヤフー新体制を率いる副社長執行役員 CEOの川邊健太郎氏

ヤフー新体制を率いる副社長執行役員 CEOの川邊健太郎氏。

仮想通貨事業は「モバイル決済との連携は計画していない」

ヤフーの100%子会社であるZコーポレーションは4月13日、仮想通貨交換業者ビットアルゴ取引所東京への資本参加を発表している。一部報道では、これがヤフーの実質的な仮想通貨事業への進出との見方もある。

これについて川邊氏は、

「ビットアルゴにはヤフーとしてブロックチェーンの研究開発のための資本参加。ブロックチェーン技術の研究開発の意図が強い。モバイルとの連携をすごく計画しているわけではないが、研究テーマの1つとしては考えていきたい」

と、モバイル決済事業との直近のシナジーについては否定した。

新規事業の「モバイル決済」立ち上げに年間200億円を投下

経営資源と集中させるのは「EC」「インターネット広告」「モバイル決済」

経営資源と集中させるのは「EC」「インターネット広告」「モバイル決済」だ。

撮影:伊藤有

2018年以降の成長戦略として、川邊新体制のヤフーが重視するのは3つの領域だ。

  • 「EC」
  • 「インターネット広告」
  • 「モバイル決済」

この3領域に経営資源を集中し、それぞれ今後数年で国内ナンバー1になることを目指す。これらの強化と立ち上げのために、2018年度に投資する費用総額は300億円を見込む。

その内訳は、インターネット広告強化に関連する訪問者や滞在時間を増やすための「コンテンツ調達費用」が100億円、そして新規事業となる「モバイル決済の立ち上げ費用」として200億円だ。

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モバイル決済において、ヤフーは後発だ。競合には、楽天EdyやモバイルSuica、Apple Pay(iD、QUICPay)、LINE Payなどもおり、すでに相当なレッドオーシャンといえる。

モバイル決済市場で勝つためのヤフーの勝算は、取扱高約1.4兆円、3987万口座(2017年度末時点)を持つ「ヤフーウォレット」の活用だ。

「クレジットカードなりのチャージの口が刺さって(活性化して)いて、ログイン済みで日常的に使っているYahoo!JAPANアプリから使えることが最大の強み」(川邊副社長)と説明するように、確かに成長を支える素地としては一定のポテンシャルがあるのは確かだ。

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気になるのは、その普及のための200億円という巨額投資をどのように使っていくのか?

立ち上げのための費用には、主に「開発費」「店舗費」「ユーザーインセンティブ」の3つがある、と川邊氏は説明する。まず使えるお店を増やしていくため「店舗費」に注力し、代理店制度なども検討しながら対応店舗拡大を早期にはかっていく方針だ。

質疑の中で「(200億円の細かな用途は)サービスイン後、テストを繰り返しながら、費用の投下先を決めていきたい。(こうした場でその内訳は)報告できるようにしていく」と、細かい割り振りについては、利用状況のフィードバックを見ながら、随時判断していく方針を明かした。

3つの領域を強化していき、2020年代にはコマースとメディア事業が1:1になる規模とし、新規事業でも存在感ある営業利益の創出が目標

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「新たな挑戦への費用」300億円を投資とし、新たな2018年度は営業利益ベースでは大幅減益を見込む。

2018年度営業利益の増減要因

2018年度営業利益の増減要因

撮影:伊藤有


広告関連売上の推移。初の3000億円突破となった。

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月間アクティブユーザー(MAU)は4392万ユーザー。前年度比12.7%増。

2017年度通期では増収減益。川邊新体制で開始するモバイル決済事業はどう成長していくのか。

ヤフー決算発表会


(文、写真・伊藤有)

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