19歳慶大起業家、ブロックチェーンで作る政治の場
ブロックチェーンを活用した議論プラットフォームを開発するスタートアップのPoliPoli(ポリポリ、相模原市)は、個人投資家の西川潔氏や鶴田浩之氏、ベンチャーキャピタル(VC)のエフベンチャーズ(福岡市)を引受先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、1000万円弱とみられる。ポリポリは、現役の慶応義塾大学の学生が起業。議論が白熱して「炎上」しやすい政治を舞台に、有権者が自律性をもって議論ができる環境を整えたい考えだ。
同社が開発を進める政治プラットフォーム「ポリポリ」では、「ポリン」と呼ぶトークン(デジタル権利証)をユーザーに発行する。プラットフォーム上では、政治家や有権者が交流サイト(SNS)と同じように発言ができる。有権者は、気に入った発言に対してポリンを投じることで、自分の政治志向と同じ人を支援できるという仕組みだ。
ポリンは発行数に限りを設ける。有権者は、性別や年齢などの情報をポリポリに登録することでポリンを得られる。プラットフォーム上での発言や議論の内容を通して得られる「信頼スコア」に応じてポリンが与えられるため「スコアを上げたい有権者は炎上するような発言が少なくなる」と伊藤和真最高経営責任者(CEO)は狙いを語る。オピニオンリーダーになるような一般市民も選出して「自律性を持った政治環境にしたい」(伊藤CEO)という。
また、有権者はポリンを政治家に送ることができ、政治家はそのポリンを利用してポリポリの提携業者などから自身の政治活動に使う備品との交換ができるようになるという。「トークンエコノミー(トークンを活用した経済圏)を政治に持ちこむプラットフォームは世界で初めてではないか」と自信を見せる。将来、仮想通貨交換事業者と連携できれば、ポリンは現金に交換することもでき、政治活動に充てることも可能だという。
ポリポリは、ブロックチェーンを活用せず立候補者の発言や政策などをまとめたメディアアプリの運営では、すでに実績を持つ。17年11月に行われた千葉県市川市長選の候補者全員の情報が見られるアプリを制作し、実際に候補者が利用した。
開発を進める伊藤CEOは慶応大商学部2年生で19歳。共同創業者の倉田隆成氏と山田仁太氏も同い年の1998年生まれだ。2016年に選挙権年齢が引き下げられ、18歳も投票ができるようになった世代。伊藤CEOは「17年の衆院選が終わってサービスを考え始めた」と明かす。政治が身近になったことで、「イノベーションが起きていない政治や行政に興味がわいた」(伊藤CEO)という。
登記上の本社は相模原市だが、活動拠点は慶応大の日吉キャンパス(横浜市)だ。「大学図書館のグループ学習室にこもって活動してますよ」と伊藤CEO。トークンと法定通貨を交換できるようになれば、手数料などでマネタイズできるが「現状は課金できるモデルを組んでいない。当分は調達資金で開発を続けていく」という。18年中にトークンの配布を始め、19年夏の参院選に向けてサービスを拡大させたい考えだ。(矢野摂士)