これから始める人も知っておきたい仮想通貨「焼け野原」の現実

政府は発展を後押しするというけれど
「仮想通貨先進国」と呼ばれ、政府も仮想通貨ビジネスを後押しする姿勢を見せてきた日本。しかし仮想通貨大量流出事件を受け、規制当局の姿勢は大きく転換した。仮想通貨ビジネスに可能性を見出し、いち早く事業化してきた中小業者の世界は、早くも「焼け野原」の様相を呈し始めているという。いま仮想通貨の世界で何が起こっているのか。『知っている人だけが勝つ 仮想通貨の新ルール』を上梓した小島寛明氏が、その様子をレポートする。

規制強化で、総崩れの「みなし業者」

仮想通貨取引所コインチェックから巨額の仮想通貨が流出した事件をきっかけに、金融庁による業者への締め付けが強まっている。

とくに影響が大きいのは、金融庁から登録のための審査を受けていた「みなし仮想通貨交換業者」だ。1月末の事件前は16社がみなし業者として営業していたが、撤退する企業が相次ぎ、いまは8社に減った。

 

いまのところ事業を継続しているみなし業者も、全社が資金決済法に基づく業務停止命令や業務改善命令を受け、総崩れ状態だ。登録を目指す8社も、厳しい審査を乗り越え、最終的に何社が残るか見通しにくい。

「非常に不本意な形で、廃業を余儀なくされた」

みなし業者のひとつbitExpress(ビットエクスプレス)の泉秀樹社長(62)は、こう語る。

仮想通貨の取引所と言えば、パソコンのウェブサイトやスマートフォンのアプリで仮想通貨を売買するイメージが強いが、ビットエクスプレスのビジネスモデルはちょっと、ほかとはちがった。

国内外からの観光客でにぎわう沖縄県那覇市の繁華街「国際通り」。ビットエクスプレスは、大手ディスカウント店ドン・キホーテの地下に店を構え、主な顧客は中国人を中心とした外国からの観光客だった。

大まかに言えば、ビットエクスプレスは、客が持っているビットコインと、店が持っている日本円を対面で交換する両替所だった。

店頭で、顧客がビットコインを保有する口座から、スマートフォンを使って店側の口座に送ってもらう。送金が確認できると、日本円を現金で渡す。

泉社長は「古典的なまちの外貨両替所として営業しようと考え、実際にそのようにやっていた」と話す。

多くの外国人観光客が訪れ、在日米軍基地の軍人・軍属が生活する沖縄では、街なかに多くの両替所がある。

ビットエクスプレスは、もとはCG(コンピューター・グラフィックス)のスタジオを営み、印刷・出版用の画像や、CGの動画制作に携わってきた。仮想通貨事業に進出したきっかけは、4、5年前、中国人観光客から「ビットコインを持っているんだが、日本円と交換できないか」と問い合わせを受けたことだった。

2014年2月には、取引所マウント・ゴックスが経営破綻し、ビットコインが話題になった。

2016年2月、那覇のドン・キホーテの地下に店を構え、ビットコインの両替所を始めた。

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