誰でもトークンを公開可能な「新取引所」構想
前回(<世界最大の仮想通貨取引所が「日本を拠点にしない」理由>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55791)でも触れたように、世界最大の取引高を誇る仮想通貨取引所バイナンスは、特定の国には縛られない。
これだけでも十分に「非中央集権的」に思えるが、バイナンスのCEOで「CZ」という呼び名で知られる趙長鵬(ジャオ・チャンポン)は、さらに先の段階に進もうとしている。
バイナンスは、誰でもトークン(仮想通貨)を公開できる非中央集権的な仮想通貨取引所の開発を進めているのだ。
「非中央集権的な取引所こそが未来だ」と、CZは言う。「だがそれが実現するのには、まだ時間がかかる」
この非中央集権的な取引所は、バイナンスの既存の取引所とは別のものになる。
「私たちは、コミュニティと一緒になって、ルールを構築する」と、CZは説明する。
「インフラを動かしたければ、誰でも動かすことができるし、取引や手数料によって相応の報酬も得られる」
「資金が集中しないこと」の長所と短所
バイナンスが非中央集権的な取引空間に向かう動きは、大きなトレンドの一環だといえる。すでに、こうした非中央集権的な取引所はいくつか存在している。
今年はじめに日本の取引所コインチェックから、ハッカーらが5億ドル以上の仮想通貨を盗んだ事件によって、中央集権的な取引所のセキュリティに対して懸念が高まっている。
中央集権的な取引所は多額の資産を保管するため、盗人を惹きつける存在になっている。バイナンスもハッカーのターゲットになったことがあるが、同社は攻撃を阻止したと主張している。
非中央集権的な取引所は、こうした問題への対策にもなる。バイナンスの非中央集権的な取引所の場合、ユーザーは資金を預ける必要はない。つまり取引所側が、顧客の資金を保有しないということだ。これにより、利用者の匿名性はさらに守られるだろう。人々は単純に、ブロックチェーン上で仮想通貨を相互に交換するだけだ。
だが、非中央集権的な取引所にも欠点があると、CZは言う。手数料が高めになる、というのだ。理論上、多くのコンピューターが同じコードを実行すればよりコストがかかるからだ。取引も遅くなるし、中央集権的な取引所と比べて流動性に欠けるだろう。
「非中央集権的なテクノロジーは、中央集権的なものより動きが遅いため、現在取り扱っているような量を処理することはできないだろう。スピードやパフォーマンスはそのうち向上するはずだ」と、CZは言う。