去年の冬は、仮想通貨「魅惑の季節」だった
2017年末、日本はまさにビットコインの世界的な中心地のようだった。何百万というアジア人投資家に後押しされ、価格は右肩上がりだった。中国が仮想通貨取引所を厳しく取り締まったことや、韓国も同じような状況になることが懸念されて、日本は仮想通貨に友好的な国として注目を浴びた。
2017年、日本はビットコインを合法的な決済手段として認め、現在までに仮想通貨取引所16社が認可を受けている。当時、渋谷の街を歩けば、ビットコインやイーサリアムでの支払いができると喧伝する店舗や、巨大なビットコインとともに、魅惑するようなポーズをとるモデルの屋外広告も目にしたものだ。
すると、まるで”善意に満ちた東京”を懲らしめるかのように、ハッカーが日本の取引所を襲った。2018年1月、ハッカーたちは仮想通貨取引所大手コインチェックから5億ドル以上を盗んだ。みなし業者だったコインチェックだが、現在までにすべての顧客に対して返金を完了している。それでもこの事件は、日本の当局を大いに驚愕させたため、業界にはいまだに払拭できない影が覆っている。
とはいえ、表面的には、日本はまだ十分に友好的に見える。最近でも米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、米仮想通貨取引所のコインベースの日本進出についての記事で、ビットコインの取引の約3分の2が円建てだとして、日本を「仮想通貨の天国」だと書いている。3月の時点で、日本では20代、30代、40代を中心に、300万人以上が仮想通貨に投資を行っているとされる。
もはや、ICOにも不向きな環境に
現在、日本の仮想通貨業界には、誰一人としてこの環境を天国と呼ぶ者はいない。コインチェックのハッキング事件以来、新しく認可された取引所はない。東京を拠点に活動する弁護士の斎藤創は、この状況を「極めて異例」だと述べる。
ブロックチェーンの資産運用会社スイスボーグの日本代表を務める谷上健は、4月に掲載された記事(<日本の仮想通貨規制は、ウォール街の失敗を繰り返してはならない>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55351)で、より強い表現をしている。
「現在、何百もの交換業免許とICO(イニシャル・コイン・オファリング=新規仮想通貨公開)が待たれる中で、日本の仮想通貨・ブロックチェーン業界は、強い危機感を抱いている」
そして直近にも、日本の当局は、横浜を拠点とするFSHO社からの仮想通貨交換業の登録申請を拒否した。
日本の仮想通貨業界は、金融庁によって規制されている。斎藤は「金融庁の業界に対する態度が、コインチェックの事件によって一変してしまった」と語る。新規の登録許可が下りていないばかりか、5月末時点では、日本における合法な通貨を示す「ホワイトリスト」には、新しい仮想通貨がひとつも登録されていなかった。3月には、いくつかの仮想通貨交換業者が、金融庁の要求に従っていないという理由で業務改善命令を受けたり、業務停止になったりしている。
また、日本でICOを実施する場合にも、現在はよいタイミングだとは言えない。「日本でICOをするには2通りあるが、今はどちらも難しい」と斎藤は説明する。
ひとつめの方法は、ICO発行者が仮想通貨交換業の登録をすることだ。2番目の方法は、認可された取引所、またはいわゆるICOプラットフォームに、すべての販売活動を委託することだ。
最初の方法は、費用がかかる上に6ヵ月もの時間までかかると、斎藤は言う。2番目の方法の問題は、今のところ金融庁によって認可されたICOプラットフォームが存在しないことだ。斎藤はさらに、「現在、日本には16社の登録業者が存在するが、どこもICOを販売する許可が得られていないようだ」と話す。ブロックチェーンの分析を行うエレメンタス社のデータによれば、2017年末から2018年初頭に日本のICOで調達された資金は約70%も下落している。