メタップス、北九州でQRコード決済の実証実験を開始 —— 過熱する「九州キャッシュレス化」競争

北九州市

今回のQRコード決済実証実験の舞台となる、「北九州の台所」旦過市場。最近は外国人観光客もよく訪れる人気スポット。昔ながらの市場でスマホ決済がスタンダード化する日もそう遠くない……かもしれない。

提供:北九州観光コンベンション協会

LINE Payが決済手数料を期間限定で無料にすることを発表するなど、キャッシュレス社会の早期実現に向けた取り組みが注目されるなか、また新たな動きが出てきた。

ウォレットアプリを通じたQRコード決済事業を手がけるメタップスのグループ会社「pring(プリン)」は8月20日、キャッシュレス決済の導入促進につなげるための実証実験を、北九州市で始めると発表した。9月1日から12月末まで、業務提携先のみずほ銀行や地元金融機関と協力して実施する。

参考記事:メタップス、QRコード決済手数料「0.95%」業界最安値の衝撃 —— キャッシュレス化の起爆剤になるか

同様の検証事業は、6月1日から福島県で行われているものに続き、2件目。福島ではツルハドラッグやローソン、ファミリーマートなど6店舗が対象だったが、北九州市では、JR小倉駅の周辺の約50店舗や大型商業施設、北九州空港内の土産物店、第一交通のタクシー約80台でアプリ決済が可能になり、検証の規模が大幅に拡大される。

福島の実証実験では、従来からの提携先であるみずほ銀行に加え、現地の東邦銀行と接続して決済サービスを提供しているが、北九州市でも実証実験を機に地元の福岡銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行と接続する

pring

メタップスグループが提供するQR決済サービス「pring(プリン)」のサービス説明画面。業界最安水準となる手数料「0.95%」を発表した直後、LINE Payが3年間の手数料無料を発表するなど、事業者間の競争が過熱している。

pringサービス画面より

「pring」は、SNSや電話番号を用いた送金機能や、加盟店でのQRコードを用いたスピーディーな決済を実現するもの。銀行口座と直結しているため、アプリへのチャージや口座に戻しての現金化がスムーズに行える。送金や支払い、口座からアプリへのチャージ、アプリから口座への戻し入れにも一切手数料がかからないのが特徴。

事業者の思惑が入り交じる「九州戦線」

日本経済新聞紙面

日本経済新聞(2018年7月24日付)の九州地方経済面。アリババとの提携に、上場したJR九州の外国人観光客取り込みに向けた本気度を感じる。コンソーシアムにはLINEも参加との情報もあり、九州の動きから目が離せない。

日本経済新聞紙面より編集部がキャプチャ

九州地方では、JR九州と中国のアリババグループが訪日観光客誘致のための提携を7月23日に発表。アリババが同社の旅行予約サイトを通じて中国人向けの訪日情報を発信する一方で、JR九州がアリババの電子決済「アリペイ」の国内導入を支援することを表明している。

日本経済新聞(2018年7月24日付)によると、その具体的な方策として、両社は九州でキャッシュレス化を推進する「キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアム」を設立。JR九州の唐池恒二会長を座長、アリババを事務局に、QRコード決済などの普及を目指す。「pring」の北九州市での実証実験に協力する第一交通も、コンソーシアムへの参加を表明しているという。

また、QRコード決済サービス「Origami Pay」を運営するOrigamiは、福岡市内の屋台や商店街、商業施設、タクシーを対象に、福岡市の助成を得て実証実験を行うことを6月13日に発表。同社はアリペイとも提携している。

利害関係者が複雑に入り交じる九州で、QRコード決済のサービス普及、加盟店拡大に向けた動きが今後さらに加熱しそうだ。

(文・川村力)

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