ブロックチェーンは決して“万能”ではない──ビジネス活用に必要な理解とその本質「可能性」から「弱点」までを徹底解説(1/4 ページ)

日本では、ビットコインによって有名になった「ブロックチェーン」。仮想通貨投機の熱が収まってきた今、ビジネスでの実装が注目されつつある。とはいえ、海外に比べればその動きが鈍いのは事実。その理由はどこにあるのだろうか?

» 2018年11月28日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 投機を目的にした「仮想通貨」の熱が落ち着きつつあるのと同時に、セットで語られてきた「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」が新たなステージに入りつつある。ガートナー ジャパンが発表した“ハイプサイクル”でも、過度な期待のピークを過ぎ、「幻滅期」へと進んでいることが話題になったのは記憶に新しい。

 日本でも、パルコや東京海上日動、LIFULLなどブロックチェーンをビジネスに活用しようと実証実験が行われているものの、実導入まで進んでいる案件はないと言っても過言ではない状況だ。通貨にとどまらず、資産の管理やその取引などの在り方を根本的に変えるほどの可能性がある、と大きな期待が寄せられる一方で、普及が進まないのにはどのような理由があるのだろうか。

photo ガートナーが発表した「日本におけるテクノロジのハイプサイクル:2018」。AIやブロックチェーンが幻滅期に入りつつあることで話題になった

 「日本企業においては、可能性や弱点も含めて、ブロックチェーンの理解がまだまだ進んでいないのが現状です」

 こう話すのは、GunosyとAnyPayのジョイントベンチャー「LayerX」でCTO(最高技術責任者)を務める榎本悠介さんだ。同社は2018年8月に創業して以降、ブロックチェーンに特化した事業を展開している。榎本さんがブロックチェーンの本質的な特長として挙げるのは「“書き換えできない”という技術的な特性により、価値の保存や移転(交換)が簡単に、そしてローコストで行えること」だ。

今さら聞けない? 「ブロックチェーン」をおさらい

 一般的にブロックチェーンの特徴として挙げられるのは「データの改ざんが実質的に不可能であること」「低コストかつシステムとしてダウンしにくいこと」「中央に管理者を置かない形で、データと運用を維持(管理)できること」の3つだ。

 ブロックチェーンとは、トランザクション情報を集めた「ブロック」を一定時間ごとに生成し、チェーン(鎖)のような形で連結していくことで、データを保管する技術だ。

 そのブロックチェーンに参加しているノード(ネットワークに能動的に接続されている電子デバイスやPCなど)全てが同じデータ、つまりデータの更新履歴を所持することで、そのデータの“信頼性”を担保する仕組みといえる。データのありかが分散しており、それらがP2Pネットワークでつながっているため、システムとしてダウンしにくいほか、運営コストを全ての参加者(ノード)が負担する形なので、ネットワークを作るコストは低くなる。

photo ブロックチェーンでは、暗号化されたハッシュ値を使って、前後のデータのつながり(整合性)を証明する(出典:オルタナティブ・ブログ「ITソリューション塾」)

 新たなブロックを生成する際は、古いブロックの情報(ハッシュ値)を暗号化して組み込むことでその関係性を証明する。そのため、過去のデータを書き換えようとしても、それ以降に生成されるブロック全てにおいて、暗号化も含めた“つじつま合わせ(再計算)”を行わなければならないため、膨大な計算処理を永久的に続ける必要がある。それが「実質的に改ざんが不可能」といわれるゆえんだ。

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