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大石哲之:マウントゴックスの民事再生計画の今後は

以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

 先週で最も重要なニュースは、仮想通貨取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の民事再生計画のスタートだろう。Mt.Goxは2011年にハッキング被害にあい、75万BTC(ビットコインの通貨単位)が消失して破産した。破産時に残っていたのは20万BTCであり、この配分をめぐって長い破産処理が継続していた。

破産時の評価額は1BTCあたり5万円程度であったが、その後の大幅な値上がりにより1BTCは200万円をつけた時期もあり、これらをすべて円に換金して配当すると、破産時の債権をすべて返却してもあまりが出てしまう。余りの分は株主である元CEOのマーク・カルプレス氏の手元にいくことになり、その額は2000億円以上であるといわれていた。

当時BTCを失ったひとは、1BTCあたり5万円しか返ってこない一方で、元CEOが2000億円儲ける。これはあまりのモラルハザードであるため、別の案が模索されていた。

今回の民事再生計画案では、破産手続きを中止し、Mt.Gox社を存続させる。すでにビットコインを現金化したお金もあるため、債務をすべて返却しても債務超過にはならないはずである。債務超過が前提の破産ではなく、会社を存続させつつ、資産を配分する道が開かれた。

会社の存続が決まれば、ビットコイン建ての債権は、ビットコイン建てで返却する(引き出せるようにする)こともできるようになるため、債権者には朗報だといえる。また、Mt.Gox社に残っている15万BTCほどのビットコインが市場で売られることもなくなるため、下げ相場が続いているなかでは、悪くない材料だろう。

さて民事再生の計画だが、民事再生手続きが「開始」されただけであり、ここから再び破産手続きの時と同様の債権届けや、確定などの諸手続きが続く。これらにどのくらいの時間がかかるのか不明だが、再生計画案の提出期限が平成31年2月14日となっているように、まだまだ先の道のりは長いといえる。ビットコインが返却される時期は、またこれから3年、4年後になってしまうかもしれない。事件から合計で7年、8年かかってしまうことになる。

コインチェックによる仮想通貨ネム(XEM)流出事件は非常に残念な事件であったものの、破産手続きとなればこのような長期の時間がかかることにもなりかねないはずだった。事件に巻き込まれた人にとっては辛いと思うが、速やかな補償による解決は、ベストな方策だったと言えなくもない。

コインチェク事件以降も韓国の取引所を中心に仮想通貨の流出・ハッキング事件は止みそうもない。

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※2018年6月26日に執筆
執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所


韓国の最大手仮想通貨取引所、ハッキングによる被害額の半減に成功

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韓国

 韓国の仮想通貨取引所最大手ビッサムが28日、ハッキング事件による被害額を約半分まで低減したことを発表した。

同取引所では20日にサイバー攻撃にあったことを発表し、全ての入出金を一時的に停止した。当初、被害額を350億ウォン(約35億円 )相当と公表していたが、その後の復旧対策によって被害額を190億ウォン(約19億円 )相当まで減少したと伝えている。被害の低減にあたっては、世界中の仮想通貨取引所や仮想通貨関連団体の協力による貢献が大きいとするほか、サイバー攻撃の発覚後の迅速な初動対応も被害の拡大を防いだと説明している。

同社は20日の発表時に、流出した仮想通貨を同社が補填することを約束している。この度の発表は進捗の報告となり、事件への対応が完了するまで引き続き、復旧と再発防止策に取り組むことが伝えられた。また、新たな発表を行うまで、入金を控えるよう顧客に呼び掛けた。

今回の発表では、流出した仮想通貨が11種類に及んだことが初めて明らかになった。最も多額となったのはビットコイン(BTC)で約13億円相当の2,016BTCが盗まれた。主要通貨であるイーサリアム(ETH)やビットコインキャッシュ(BCH)、リップル(XRP)のほか、マイナーコインであるエルフ(ELF)、ゴーレム(GNT)、カイバーネットワーク (KNC)も含まれた。

今年に入ってから仮想通貨取引所のハッキング事件が相次いでおり、1月に日本の仮想通貨取引所コインチェック、2月にはイタリアのビットグレイル 、4月にはインドのコインセキュア が被害に見舞われた。それぞれのケースにおいて、流出した仮想通貨の回収が実現しなかったことから、取引所の自己負担によって補償が行われることとなった。ビッサムによる被害低減は、仮想通貨の盗難に対する取引所の対抗力が高まった事例として注目したい。

《MT》


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