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仮想通貨を巡る各国の法規制動向

2017年初には11万円だったビットコイン/円は、12月には一時20倍超となる233万円の高値をつけた(フィスコ仮想通貨取引所より)。特に12月の上昇率はビットコイン先物上場による機関投資家の市場参入などを経て非常に大きなものとなり、12月の一ヶ月だけで最大約3倍の値上がりを見せた。

さらには、2017年以降、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨技術を利用したクラウドファンディングが多数出現し、資金調達額が1億ドルを超える規模に達したものも複数出現することとなった(coin scheduleより)。このような仮想通貨関連市場の急激な変化と成長を受け、各国の法規制にも大きな動きが生まれた。

 現状の各国の法規制動向を俯瞰すると、おおよそ次の4タイプに大別される。1、秩序ある市場形成のための法整備を開始している国、2、ICOなど法整備が不十分な領域のみを違法として対処しようとする国、3、ICOも仮想通貨取引も違法とする国、4、法規制の方向性がまだ明確でない国の4タイプだ。

先進国の多くは、多少の性格の違いはあるものの多くは「1、秩序ある市場形成のための法整備を開始している国」に当てはめることができる。方向性の違いとは、仮想通貨や関連技術のイノベーションを健全に育成して阻止しないようにすることに力点を置いているか、または資金洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金供与などの防止、消費者保護などの観点から消費者や取引所の活動の監視強化に力点を置いているかという点だ。

当然ながら先進国は前述の両方向において注意を払っているものの、欧米諸国においては仮想通貨を利用したISISへの資金供与などのニュースが目につくことから監視の強化に話題が集中する。次のG20で、ビットコインの法規制を団結して議題に上げることをフランス経済・財務相が提案していることも、こうしたトピックと無縁ではなかろう。

一方で、日本においてはテロ資金供与などのトピックはやや距離があり、どちらかと言えば消費者保護や詐欺行為の防止の観点とともに、「フィンテック」という新たな市場の健全性をイノベーションの阻害をすることなくどのように保っていくかといった方向に焦点があたりやすい。

具体的には、北米、EU諸国などは現状では仮想通貨関連の取引を禁止はしておらず、法の遵守の原則の下に自由としている。ただし、今後取引所における個人情報取得や、個人の保有額の把握などの監視強化の方向にシフトしていくと予想される。実際にアメリカでは2017年12月時点で、仮想通貨保有者への監視を強化する法案が作成されているところだ。

これら各国はICOに対しても注意喚起を行っており、アメリカでは実際に既存の証券法の下で管理することとして監督の強化を実施している。他方、日本やシンガポール、イギリスなどは、もちろん消費者保護やICOに対する法整備は進めながらも、今後の市場参入事業者への視点も感じられる。シンガポールやイギリスでは、レギュレトリー・サンドボックスを設置するなどの試験的試みが導入されている。

「2、ICOなど法整備が不十分な領域のみを違法として対処しようとする国」の代表例は韓国である。2017年夏以降、韓国ウォン建てによる仮想通貨取引量が急激に増え、ビットコインだけでなくリップルやイーサリアムなどの韓国ウォン建ての取引量は日本円、米ドルに続き第3位となった。

しかし、市場の急成長と共に、取引所のハッキング、また詐欺的要素の強いICO案件の出現などの懸念点を背景として韓国規制当局は2017年9月にICOを禁止することを発表。また、2017年12月には仮想通貨取引についても一定の条件をクリアした事業者やユーザーのみが参加できることとする方針を発表している。

「3、ICOも仮想通貨取引も違法とする国」の代表例は中国である。中国は今年9月、仮想通貨取引とICOを違法とし、取引所には営業停止を指示し、ICOを行った事業者には調達した資金を出資者に戻すことを要請した。2017年初頭までは、ビットコイン総取引量のうち人民元建ての取引が9割以上を占めていたが、これによって人民元取引は急激に減少することとなった。

しかし、9月以降も人民元建ての仮想通貨取引は消滅してはいない。Localbitcoins.comという、取引所を介しない個人間による仮想通貨交換プラットフォームでは、9月以降人民元建ての取引が5倍に急増している。もともとの投資家人口の多さや、また取引所などを介さずとも簡単に資金を移動させることができるという仮想通貨の性質によって、完全な消滅は難しい状況である。


類似する国家はロシアで、ロシアはまだ中国のように明示的に仮想通貨取引を違法とはしていないものの、政府高官によってたびたび「ビットコインはロシア政府がなんら価値的裏付けなどを認めるものではない」という発言がなされている。ロシア政府による独自デジタル通貨発行の構想が、プーチンの指示の下に行われていることも事実だ。

こうした国家による仮想通貨禁止と国家のデジタル通貨発行の動向が、市場全体にどう影響するかは注視していく必要があろう。

上の2国とはやや性格が異なるものの、ジンバブエ、ベネズエラなど自国通貨の不安定や政局の変化を迎える新興国においては、やはり仮想通貨取引は原則として禁止されてきた。しかし、金融危機の状態にある国民による仮想通貨所有や、決済利用は実質的には止めることができない状態となっており、ベネズエラではついに2017年6月、銀行規制当局の監視の下でビットコイン取引所Monkeycoinの運営を公式に許可することを発表した。

2017年1月にはマイニングを行ったという理由で逮捕される者も出ていたベネズエラだが、実情に沿う形へと規制が変化したこととなる。ビットコイン等の仮想通貨の価格上昇が、金融危機にある国に与える影響の一例といえる。

最後に、これまで紹介してきた各国以外にも、多数の国が現状ではどのように仮想通貨に対する法規制を行うか、その方向性を検討している4の状態にあるといえる。今後、市場の成長や技術開発に伴いいかなる社会問題や判例などが発生していくかを観察し、その需要に対応する形での法整備が進められることとなるのは必然である。


《SI》


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