大河内薫:「仮想通貨の利益が20万以下=確定申告不要」は大間違い!?
以下は、フィスコソーシャルレポーターで税理士の大河内薫氏(ブログ「Time is Life」を運営)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
みなさんこんにちは。最近は仮想通貨にどっぷりはまっている税理士の大河内薫です。
そんな最中、気になるワードが目に飛び込んできました。
「仮想通貨の利益が20万円以下なら、確定申告は不要…!」
サラリーマンの副業利益が20万円以下なら確定申告不要論。その仮想通貨バージョンですね。
これ、実は「半分は合っていて、半分は間違い」なんです。
ここでは何が間違っているかを明確にしておきましょう。
サラリーマンで所得税の確定申告が不要な人は、厳密に言うと、「給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人」です。
1. 20万円以下でも所得税の確定申告をするケース
このケースは無数にあります。仮想通貨の利益=雑所得が20万円以下でも、他に事業所得や譲渡所得などがあって雑所得との合計が20万円を超えれば確定申告が必要となります。
2. 20万円以下でも確定申告書への記載は必要
仮想通貨の利益以外の別件で確定申告する場合は、利益が20万円以下でも確定申告書に記載が必要です。
別件の具体例としては、住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)での確定申告などです。また、事業所得で確定申告をするフリーランスの方にも、仮想通貨の利益20万円以下の申告不要制度は関係がありません。
法律ではとにかく「立法趣旨」というものが重要です。それでは、この申告不要制度の立法趣旨は何なのかを噛み砕いてみると
「副業収入20万円までは確定申告しなくてOKだよ。少額な申告のためにお互いに時間を取られるのは消耗するからね!でも、そもそも別の理由で確定申告する場合は利益が1円でも載せてよね。だってついでの作業だから消耗しないでしょ?」
このようなニュアンスが入っています。
仮想通貨の利益とは別件で確定申告をする方は、仮想通貨の利益が例え1円でも、雑所得の欄に記載が必要です。
3. 住民税の確定申告は必要
「仮想通貨の利益が20万円以下で確定申告不要」というのは要件が色々とあり、狭き門です。
そして、その狭き要件を満たして晴れて確定申告不要になって終わり!…ではありません。
確定申告と言えば、一般的には所得税の確定申告を指します。しかしながら、住民税にも確定申告が存在しています。仮想通貨の利益が20万円以下で、確定申告が不要になるのは「所得税の確定申告」だけです。
この事実を知らずに住民税の確定申告を提出し忘れる人はかなり多いです。もちろん誰も教えてくれないので仕方のないことですが、この記事を読んでくださっているあなたは忘れないようにしてください。
仮想通貨の利益が20万円以下で所得税の確定申告が不要となっても、住民税の確定申告は必要です。管轄が税務署ではなく地方自治体になるので、お住いの区役所や市役所にお問い合わせください。
確定申告をすべき人が、悪意なく確定申告をしなかったとしても「知りませんでした」では許されません。みなさんが、適切に確定申告をできますように。
※2018年2月27日 14時に執筆
執筆者名:税理士 大河内薫
ブログ名:Time is Life