大石哲之:ハードフォーク後のMoneroの混乱
以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
仮想通貨モネロ(Monero、通貨単位XMR)が大混乱に陥っている。事の発端は、BITMAIN社が、Moneroを採掘(マイニング)できる専用のASICチップを搭載したマシンを発売したことである。
これは従来の汎用GPUによるマイニングより圧倒的に効率がよく、そのままでは、すべてのマイナーがBITMAIN社の機器を利用することになる。マイニングが一社の機器の独占下にあることは、中央集権化や、権力が発生することになりよろしくない。
そこで、開発者の提案で、ASICでは採掘できない新しいアルゴリズムを組み込んだハードフォークを実施することとなった。
ハードフォーク自体は行われたものの、チェーンは2つに別れることとなった。ハードフォーク前(ASICで掘ることが可能)のチェーンは、Monero Classicとして残ることになり、AISCユーザーはこちらを掘ることになる。
しかし、これに乗じて、Moneroのフォークがいくつか発表され、すくなくとも4つのフォークが企画されている段階である。
<フォーク済み>
Monero(ハードフォーク後チェーン)
Monero-Classic(ハードフォーク以前のチェーン)
<さらなるフォーク候補>
Monero Classic(同名だが別人によるもの。わざと名前を同じにして混乱を狙う?)
Monero 0 (zero)
Monero Original
Monero V
さて、問題は分岐後のチェーンのハッシュレート(採掘速度)が思うように上がっていないということである。むしろ、分岐前のチェーンのほうがハッシュレートが高い状態になっており、ハッシュレートという意味でいうと分岐前のチェーンのほうが単純にみるとセキュリティが高いという結果になっている。
ASICを否定することから始まったMoneroのフォークだが、結果として見えたのは2つ。1つは、ASICを単に否定しても将来もイタチごっこになるだけであり、結果として分岐の可能性が高まってしまうこと。2つめは、ASICの効率性を選択するマイナーやユーザーも多く、蓋をあけてみるとマイナーにとってはASIC支持のほうが多数派に成る可能性である。
今回のMoneroは、ASIC耐性とコインの中央集権化という議題に対して非常に興味深いケースになりそうである。Moneroの結果がどのようになるかは、ASICや中央集権化の議論への影響も大きそうだ。
※2018年4月9日に執筆
執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所