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大石哲之:フォークしたコインの取引所付与をめぐって

以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

 ビットコインゴールド、ビットコインダイヤモンド等、ビットコインからフォーク(分裂)した後のコインが日本の取引所ではまだユーザーに付与されていない。

フォークしたコインには他にもスーパービットコイン、ビットコイン2x、ユナイテッドビットコイン、ビットコインX、ビットコインゴッド、ビットコインアトムなどがあり、これらは海外の取引所では取引量はごく少ないものの取引されている。

付与の時期や対象をめぐって、不満や損害賠償といった声もあがっているものの、付与の見通しは立っていない。

こうしたフォークしたコインをめぐる事態は単純ではなく、金融庁、セキュリティ、そして取引所の本音という3つの事情が絡み合っている。

そもそも、フォークコインといえどもビットコインとは別個のコインであるから、取引所がそれを取り扱うためには金融庁の許可が必要である。いわゆる認可コインとしてみとめてもらわないといけない。ビットコインゴールドに関しては、付与するという方針を発表した取引所も存在し、そこはすでに金融庁への許可を申請中だと聞いている。

しかしながら昨今の仮想通貨ネムの大量流出事件などの混乱もあり、金融庁は新規のコインの取り扱いについては、許可を出さない(少なくとも混乱がおさまるまでは新規は許可しない)方針のようだ。

つまり、フォークコインを取引所が取り扱うこと事態が、今の状況では難しい。今後のフォークコインも一つ一つに許認可が必要であり、さらには実績もセキュリティも定かでないフォークコインにタイムリーに許可が下りるとは考えづらい。まずは海外の取引所などで扱われることで取引量や安全性などが十分に証明されてから、その後で判断という順番になる可能性が大きい。

セキュリティの事情が次にある。フォークの時点で、取引所にフォークコインが付与されているのは間違いない。ただし、そこからフォークコインを取り出すのは簡単ではない。フォークコインのソフトウェアは洗練されておらず、悪意あるコードが入っている可能性すらある。こうしたソフトウェアに、顧客のビットコインの秘密鍵を入れて取り出すのは、極めて危険だ。最悪の事態としてすべてのビットコインを失いかねない。

価値がつくかもわからない(もしくは元のビットコインに対して価値が少額)のコインを取り出す作業としては、割が合わないだろう。

ビットコインを一旦別のアドレスに移してから取り出せば前述の事態は避けられるが、別のアドレスに移す作業も膨大な工数を取られる。鍵の生成を再びゼロから行うことになり、コールド環境でこれを安全に行う場合、非常に手間がかかる。さらにそのプロセスの間に、セキュリティ上の脅威にさらされるので、できれば鍵の再生成はどこもやりたくないはずだ。
フォークコインを想定して、こうしたプロセスを最適化することは可能だろうが、優先順位は低い。

最後は取引所の本音だ。取引所にとってみれば、できればフォークコインの対応はしたくないだろう。もっと重要な仕事があるからだ。取り出し作業、フォークコインのための入出金、フォークコインの保管システム、考えただけで、膨大な工数だ。しかも、フォークはコイン側の勝手な事情でフォークされるので、取引所としては準備もできず、場当たり的な対応になる。それにフォークが10や20、100にもなったらどうするのか。

それでも顧客はフォークコインを欲しい、訴える、というかもしれないが、そうすることで、取引所は安全性への取り組みなどを犠牲にすることになる。フォークコインはホットウォレットに置かれ、再びネム流出事件のようなことが起きるかも知れない。

事情はわかるが、それでも海外取引所は対応しているのだから国内でも対応を、と求める顧客は出てくるだろう。しかし、顧客は最終的にその代償を何らかの形で払うことになっていることを忘れてはいけない。フォークコインを数日で付与する取引所のセキュリティやコインの管理体制を受け入れるならば、そこにコインを預けておけばよい。

フォークコインをすべて扱うのは非現実的であるといえる。落とし所は2つある。

ひとつは、よっぽどのコインに成長しないかぎり、金融庁が許可しないこと。これで実質的に対応しなくては行けないフォークコインは激減するだろう。例えばビットコインのフォークで言えば、ビットコインゴールドまでとしてそれ以降の無数のフォークは将来成長するまで待つという方法だ。

もうひとつは根本的な方法として、取引所はフォークコインの付与義務を免れるという方向の判決を得ることだ。付与義務はないが判断により付与しても良いとするのが、望ましいだろう。

※2018年5月8日に執筆
執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所


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