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韓国・中国の規制と異なる方向へ仮想通貨の法整備進める日本

9月29日、韓国金融委員会(FSC)が同国内におけるICO(Initial Coin Offering、仮想通貨技術を利用したクラウドファンディングの一種)と、仮想通貨の証拠金取引を禁止することを発表した。これを受けて29日のビットコイン(BTC)/日本円(JPY)は一時約3.5%の値下がりとなったが、30日以降はまた上昇基調となっている(フィスコ<3807>傘下の仮想通貨取引所チャートより)。



この韓国の仮想通貨関連の規制に先立ち、中国ではICOの禁止と共に仮想通貨に関するすべての取引を10月末までを目途に禁止するという措置が明らかとなっていた。しかしこの東アジア二国の動きと反するように、日本では9月29日に金融庁による仮想通貨交換業者11社の登録が行われ、今後は金融庁監督のもとにKYC(顧客の身元確認)やアンチ・マネーロンダリング(資金洗浄)に取り組むこととなった。さらに、10月から金融庁は「仮想通貨モニタリング長」というポストを設けて専門チームがICOの対応に乗り出す。

各国の規制動向を踏まえて、各国通貨が仮想通貨取引に占めるシェアにも変化が生まれている。中・韓の規制以前、ビットコインなどの主要な仮想通貨取引に占める人民元と韓国ウォン建ての取引量の割合は非常に多く、特に人民元は2017年初頭までビットコインにおいて8割以上という圧倒的なシェアだったが、10月2日時点のビットコイン取引においては日本円が53.64%、続く米ドルが25.54%と、日本が過半数を占めるシェアを持つこととなった。日本はさらに、SBIホールディングスやGMOインターネットなどの国内企業がビットコインの新規発行作業である「マイニング」に乗り出す。これまでは中国が世界の7割強のシェアを占めていた市場に売ってでる構えだ。この勢力図の変化に、香港の仮想通貨取引所トーマス・グラックスマン氏は「仮想通貨の勢力図が変わり、日本にとって大きなチャンスとなる」と発言する。

仮想通貨やICOに対して、欧米諸国では現状、全面的な禁止や規制強化といった取り組みは出ていない。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は9月27日、ビットコインや仮想通貨を禁止・規制するような権限はECBにはないと発言している。また、アメリカでは大手オンラインショップOverstockが米国証券取引委員会(SEC)監督下で有価証券と分類されたICOなどに利用されるトークンについて、代替的取引システム(ATS)を提供しようとするなど積極的な取り組みがうかがえる。今後仮想通貨市場や、関連技術による新たな金融シーンはさらに発展する可能性が大いにある状態だ。

現在、日本は伝統的な方式によるアジアの金融センターという立ち位置をシンガポールに譲る状態だが、仮想通貨や関連する新技術の市場整備を加速させてアジアの仮想通貨センターを目指すことは、新たな金融シーンにおける日本の存在感を示す上でも重要であるといえる。また、日本にとってこうした新たな市場に対する潜在能力を蓄え国際的に中心的な立場をという積極的な姿勢は、今後の日本の経常収支の赤字化を食い止める上でも重要となってくる可能性がある。

現在日本の国際収支は、経常収支は黒字を維持しているものの、今後貿易・サービス収支が赤字転換し、所得収支の黒字幅も縮小することから、経常収支が赤字へシフトしていくと予想される。各国の国際収支はその成熟度に合わせて段階的に変化してゆくという「国際収支の発展段階説」では現状の「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」の段階へと移行を見せている。また、ゆくゆくは次の段階である「債権取り崩し国」となって、海外保有資産の取り崩しなどによる経常収支の赤字化に陥ることが予想される。現状では日本の所得収支の黒字は外国債など債券からの利子収入に頼るところが多く、海外企業のM&Aや海外における工場建設といった直接投資からの配当収入は少ない。このため、今後対外直接投資とともに対内直接投資をいかに拡大するかが生命線となるといえよう。このような視点からも、中国や韓国が仮想通貨に対して厳しい規制を敷く姿勢を見せている中、日本がさらなる成長の可能性がある仮想通貨という新たな市場においてアジアの中心的存在を狙う意義は大きい。

《SI》


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