中国国内の専門家が語る、中国ビットコイン規制の理由とは
中国国内の仮想通貨取引所が、当局の規制に影響を受けて次々と仮想通貨取引サービスを停止・閉鎖する旨を発表してから一週間近くが経過しようとしている。今回の規制について、中国国内のインターネットや金融サービスの専門家はどのような見解を持っているのだろうか。中国の金融ニュースサイト、チャイナ・ファイナンス・オンライン(中国金融在線)では、CCTV(中国中央電視台)が国内の専門家に仮想通貨規制についてインタビューした内容を報道しているので、その一部を紹介したい。
解説者である揚東教授は中国人民大学法学院の副学長であり、また同大学のFintech事業・インターネットセキュリティ研究センターの主任を務める人物であるが、中国当局がビットコイン取引を規制する理由について次のようなポイントがあると話している。
■ライセンスの問題
中国の金融機関は、中国銀行規制委員会や中国保険監督管理委員会(CIRC)などから事業を行うための免許を取得する必要がある。しかし現在、中国国内の仮想通貨取引プラットフォームには法的ライセンスがないため、大きなビジネスリスクをはらんでいると楊教授は指摘する。
■ビットコインの性質
楊教授によれば、ビットコインの需給と本来の価値を評価する明確な経済的価値基盤がなく、また、インフレや為替相場などその他の市場の影響も受けない。投機的な市場心理によって価格が急激に変動するため、大きな値動きが起こるときのリスクが高い。
■マネーロンダリング
仮想通貨取引がマネーロンダリングと金融詐欺、また、中国の為替規制を回避するために利用されてしまっているという指摘。仮想通貨は国境を持たないため、国境を越えた決済を行う際には外国為替規制を回避することができる。資本プロジェクトがオープンになっていない国にこうした資金が流れることを避ける必要がある、と楊教授は話す。
■ピラミッドスキーム
楊教授は、商品を使用もしくは消費されているという実態がなく、実際には事業者のみしか存在しない「ピラミッドスキーム」が仮想通貨関連プロジェクトにおいて横行している可能性を指摘する。こうした資金のやりとりに現状仮想通貨やトークンが介在し、多額の権利金や購入資金の流動に利用されているとする。
■市場操作
楊教授は市場操作の容易性も指摘する。市場規模がまだ比較的小さいため、仮想通貨に数千万ドルを投資している人なら誰でも比較的簡単に価格を操ることができ、価格の急騰を招いてしまう。結果、より資金と情報の少ない一般の投資家がその損失を被ることになる。
■ダークネット取引
現状、未使用IPアドレス等を利用するダークネット取引の効果的な監視ができていない。マネーロンダリング防止の施策やKYC(顧客確認)の実行、及びその他の効果的な措置を厳格に執行できず、仮想通貨を利用した匿名取引が行われ続けていると楊教授は話す。
以上、楊教授の説明を紹介した。今回の規制について、当局の監視と管理に置くことで上記問題を払拭し、中国国内のビットコイン及び仮想通貨市場を健全な場にするための規制という主張ともとれるが、一斉に仮想通貨取引を停止させるという措置は他のEU諸国やアメリカなどの先進国とは一線を画す強硬な手法であるといえる。
今回の中国の規制動向後、ビットコインの取引通貨シェアはそれ以前の人民元に代わって日本円、米ドル、韓国ウォンなどが存在感を強めている状態だ。今後も、中国の規制動向が注目される。
《SI》