中国はいまだ、「国家による独自の仮想通貨作成」への意欲ありか
今月初めにICOによる資金調達を違法認定し禁止、ビットコインやその他の仮想通貨の取引所の9月末での人民元での取引停止または閉鎖を決定するなど、現在厳しい仮想通貨規制に乗り出している中国だが、中国ではこの規制に乗り出す以前、昨年から「国家による独自仮想通貨作成」の可能性について言及していた。
具体的には、昨年10月にIT省庁が、「ブロックチェーン技術で世界をリードし、中国企業が世界の技術基準を設定することを希望する」とした82ページのホワイトペーパーを発表し、ブロックチェーン技術に積極的な姿勢を示すとともに、中国の中央銀行である中国人民銀行は仮想通貨を研究する特別機関を設立して実証実験に乗り出し、技術開発を進めていた。
しかし、ビットコインの高騰や中国国内におけるICOやアルトコインの急速な普及が詐欺などの犯罪の温床となると判断したという理由から、またおそらくはキャピタル・フライトの予防を優先する政府の姿勢なども絡んで、今回のような仮想通貨の全面禁止という状況になってしまったのだと思われる。
では、仮想通貨に対して中国は興味を失ったのだろうか。
中国の名門・清華大学でブロックチェーン技術を教えるHan Feng教授は、管理の利便性向上のために中央銀行がデジタル通貨を発行しようとしていたのは理解できるが、技術的課題に直面しているとする。国際決済銀行の9月17日の報告書では「中央銀行が独自のデジタル通貨を発行するかどうかを検討しなければならない」と述べているが、中央銀行自身が「利便性や消費者の好みだけでなく、金融システムや経済全体に伴うリスクや金銭的影響を考慮する政策を打つ必要がある」としており、独自の仮想通貨作成への道のりは簡単ではなさそうだ。
しかし、中国人民銀行の息がかかった中国の新聞上ではつい先週、北京中央大学の黄教授が執筆した「暗号通貨のリスクを抑制した後、国家独自のデジタル通貨を開始するプロセスを加速すべきだ」という意見を掲載。仮想通貨作成を後押しする内容が当局公認の新聞に掲載されたということは、中央銀行の見解の裏付けを反映していると受け取っていい。
また、当局は管理下においた仮想通貨のブロックチェーンの技術開発とその耐久度をテストしており、政府主導の国家独自の暗号通貨を研究している。つまり、中国独自の仮想通貨作成への歩みは止まっていないとみることができる。この規制の中にありながら、中国のフィンテック企業はブロックチェーンを勉強するよう依然として奨励されているという点もある。
管理費も安く決済速度も加速できる仮想通貨のもたらす経済的利益を求めて、中国の国家による仮想通貨作成への意欲は失われてはいないようであり、むしろ国内市場を法整備して管理することはその土台作りとなっている可能性もある。
10月18日に中国共産党第十九回全国代表大会を控えている直近で大きな動きはないと思われるが、大会後の動向に注目したい。
《DM》