プーチン、ロシア独自の仮想通貨「cryptoruble」発行を指示か
ロシアのAiF新聞が伝えるところによると、ロシア情報通信大臣のニコライ・ニキフォロフは、プーチン大統領がモスクワ・キャピタル・クラブとの非公式会議においてロシア独自の仮想通貨「cryptoruble(クリプトルーブル)」の発行を指示・決定したと発言、国家独自の仮想通貨作成が行われる事実を明らかにした。
ニコライ・ニキフォロフ大臣は「cryptorubleはまもなく発行されると信じている。なぜならもしロシアが導入しなければ、2カ月後にはユーラシア経済共同体加盟国(ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタン)の隣人が先んじているだろうからだ」と発言している。
これはユーラシア経済共同体の中でも仮想通貨導入の議論が行われていることを示唆するもので、またそれをリードしたいというロシアの意図が見え隠れしている。大臣はさらに、独自の仮想通貨の導入により国民の税金支払いの合理化等にも貢献でき、合法化されたロシアの新しい通貨の誕生にもなり得ると話している。
この発言を裏付けるように10月初め、ロシアの中央銀行は、国家独自の仮想通貨誕生は多くの利点が期待できると述べているし、イーゴリ・シュワロフ第一副首相は8月に国家独自の仮想通貨の存在を肯定する発言をしている。財務相は、中央銀行と協力して、年末までに予想される法案を起草すると述べている。
それでは、このcryptorubleとはどのようなものなのか。前述のAiF新聞では、cryptorubleはビットコインなどの仮想通貨とは異なるものとして、以下のように説明している。
cryptorubleはマイニング(採掘、ビットコインなどの新規通貨発行作業)では入手できない。また、ビットコインが中央管理体をおかずに不特定の参加者が新規通貨発行作業を行うことができることや、発行量には上限が設定されているのに対して、政府等の公的機関がその発行と管理を行う仮想通貨である。
また、cryptorubleはロシア通貨のルーブルと交換可能だが、その際にcryptorubleの出所証明ができない場合は13%の税金が課される。また、購入時と売却時に生じた差(利益)に対しても13%の税金が課されるとのことである。ちなみに、ロシアの所得税は13%である。
かねてより、ロシアは犯罪等の温床になる危惧があるとして、ビットコイン等の仮想通貨に対して否定的な立場をとっている国であり、オープンな仮想通貨市場に対しては変わらず否定的である。だが、政府管理のクローズされた国内向けの仮想通貨市場では管理体制を確立できるため、犯罪に使われることはなくなるという主張のようだ。前述の大臣の発言からは、税徴収面への期待も見える。
これは、中国の仮想通貨への対応の仕方と共通している部分があるように思われる。中国ではビットコインやその他の仮想通貨の人民元での取引停止、取引所の閉鎖など、現在厳しい規制に乗り出しているが、当局管理の元、ブロックチェーンの技術開発とその耐久度をテストし、国家独自の暗号通貨研究を継続している。また、厳しい規制の中にありながら、中国のフィンテック企業はブロックチェーンを勉強するよう奨励されているのである。こうした点から、現在の仮想通貨規制は中国の国家独自のコイン作成への土台作りではと推測される向きもある。今回ロシアが発行する「政府公認の仮想通貨」という存在は、中国独自の仮想通貨発行への呼び水となる可能性もあるのではないだろうか。
国家や企業などいかなる団体の権威にも拠らないことをコンセプトとしてデザインされたビットコインに端を発した仮想通貨が、今後もし国家によって生まれることになれば、どのような事態が生じるのかが注目される。
《SI》