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大石哲之:米SECがETHやXRPなどを証券とみなす場合の影響は

以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

 イーサリアム(ETH)やリップル(XRP)を証券として扱う方針をSECが示しています。これらだけではなく、ほぼすべてのICOを行ったトークンが証券に該当するという見解をSECは示唆しており、適用除外をめぐって激しいロビー活動がされています。

この問題について、簡単に整理してお伝えします。

まず、米国の証券というのは定義が広く、形式上はトークンなどの形をとっていても、実質的に証券性があれば、証券とみなされます。証券とみなす基準については、1933年のHowey基準ものが長らく適応されています。

これは、

(1)発起人又は第三者の努力にのみ依拠した (2)共同事業からの (3)収益を期待して行われる (4)金銭の投資

という4条件があるものは証券(投資契約)であるとするものです。

なにを言ってるのかわかりにくいのと思うので、誤解をおそれず単純化すると、「他人の努力や成果に対してお金を投じてリターンを得る契約」はすべからず証券であるといっています。

他人の努力云々というのは、投資家は要するにお金を出すだけでよく、そのコインなりが値上がりするかどうかについての努力やマーケティング、開発などを、特定の主体にお願いしてしまっているとう意味です。(それってまさに「投資」ですよね。)

リターンを得る契約というのは、コインの値上がり期待のほか、プロジェクトからの収益を受け取ることができるようなものは証券だといっています。プロジェクトの配当をコインホルダーに行うもののほか、ICOのときに値上がりによる収益をうたったりしているのもダメですよね、ということです。

ではどうすれば証券でなくなるのかということですが、やはり値上がり期待や配当するのがもっとも不都合です。そこで「ユーティリティトークン」という概念が考案されました。これは、なにかの利用価値をもつトークンだということです。たとえば、そのトークンを消費すると、ディスクスペースが使えたり、計算が行えたりします。

ETHは、イーサリアム・ヴァーチャルマシーンという分散コンピューターに計算依頼するためのトークンとして設計されました。ですので、トークンの保有は投資目的ではなく、計算依頼という実用を目的として、コインを購入するのだというロジックです。これなら証券性を排除できます。

しかし、イーサリアムで問題になっているのは、ICOのところです。ICOでは、ETHを確かに販売し、その資金で初期の開発をすすめました。資金調達から、実際のイーサリアムのジェネシスブロックのローンチまでの期間は1年ありました。ここが問題とされています。

つまりこの期間は、もっぱらイーサリアムの開発者という他人の努力にたいして資金提供し、ローンチが行われればETHが取引所に上場されるのでリターンを生むという契約に見えます。これはまさに証券です。このロジックでいうと、プロダクトが完成していない状況でICOを行ったコインは、すべて証券に該当するということになります。

イーサリアム側は、現状のイーサリアムには証券性がないと主張しており、そのとおりとおもいますが、この初期の部分をどうクリアするのかは不透明です。

XRPも同様に、もっぱらリップル社が開発やマーケティングを行い、コイン価値をコントロールしており、リップル社という他人の努力にたいして、値上がり益を期待しているため、証券のように見えます。またリップル社は米国法人であるというのも厳しい点になります。

リップル社は、XRPはリップル社の設立以前に発行されており、またXRPはリップル社と独立したトークンだと主張していますが、この言い分が通るのかどうかは不透明です。

さて、こうなると、ほとんどのコインが米国法で証券とみなされるという自体は想定されうるということになります。とりわけICOを行ったコインはすべて証券となるでしょう。

さて影響ですが、コイン運営側と取引所側の2つの視点があります。まずはコイン運営側には、SECへの登録を要求され(ハードルは高い)、登録できなかったコインは米国内では違法となります。

登録には資金の使いみちのほか、透明なガバナンスと情報の公開が必要ですが、ハードルは高いです。

コイン運営側の最大のリスクは、過去のICOの部分について違法性をとわれることです。悪質なものは、罰金や懲役を食らう運営者も出てくるのではないかと推測されます。とくに発行主体が米国内にあり、米国人に販売してしまったものについては厳しそうです。

次は取引所側です。SECに登録してないコインはそもそも扱えない、登録されたコインであっても取引所自体がSECに登録しないと扱えない、SECに登録している取引所は現在ゼロという影響があります。CoinbaseがSECに登録すべく頑張るようですが、時期や見通しは明確ではありません。

さて、いままでの議論ですが、すべて米国内のものです。コインの発行体が海外で、米国人が絡んでなければ、いままで通りトレードが可能です。つまり、Binanceなどのオフショアの取引所では、ひきつづきトレードは提供されると予測しています。

ただし、明確に米国で違法となると、Binanceなどもうっかり米国人にそれらのコインの売買を提供してしまうという大きなリスクを避ける必要があるため、一斉に上場廃止が行われる可能性も生まれます。

さて、いままで、証券とみなされるリスクについて書きましたが、SECが証券でないと認めたコインはどれになるのでしょうか?少なくともビットコインは証券ではないと認めています。

他のコインに関しては、次のような少数のものになるでしょう。

・ビットコイン
・ビットコインキャッシュ
・ライトコイン
・ダッシュ(Dash)
・モネロ(Monero)

一方、ICOを行わなかったコインは証券をまぬがれるかもしれません。つまり、資金提供を受けず、すべて無償のエアドロップなどの形で配布したものです

・NEM *[1]
・Byteball

などがそれに当たると思います。

*[1] NEMの初期配布が無償だったか、有償だったかについては明確にわかってません。有償であった可能性もあります。

※2018年4月9日に執筆
執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所


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