BHIP、ブロックチェーンを活用した医薬品売買システムのコンセプト検証を完了
ブロックチェーン技術者の育成と啓発活動を通じて、北海道のIT産業振興を目指している『ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム(以下 BHIP)(※1)』が株式会社ファーストブレスと共同で進めていたPoC(=Proof of Concept:コンセプト検証)のフェーズ1が完了。「ブロックチェーンを活用した医薬品のデッドストック(不動在庫)販売プラットフォーム」をテーマとした本コンセプト検証の詳細を発表しました。
▼ブロックチェーンを活用した医薬品のデッドストック販売プラットフォーム検証報告書(PDF)
(※1)BHIP=事務局:INDETAIL・北海道銀行、パートナー:北海道や札幌市、その他団体や企業が参画
■BHIPとは
BHIPは『北海道を「ブロックチェーン技術の集積地」として北海道に新たな技術基盤を創造する』をビジョンに活動する任意団体で、北海道や札幌市など、主旨に賛同いただいた、北海道内の団体および法人の皆様と連携しながら、ブロックチェーン技術者の育成やビジネス活用の検討に必要なナレッジ取得に役立つ学習機会・情報共有・プロモーション・コミュニケーションの効率的な機会を作る取り組みを行っています。
■ブロックチェーンを活用した医薬品売買システムのPoCについて
BHIPでは「エンジニア育成」の一環として、また「ブロックチェーン技術をビジネスへ活用する可能性を探る」ことを目的として、ブロックチェーンを活用した実証実験を行っています。今回第一弾として、ファーストブレスとBHIP事務局であるINDETAIL、北海道銀行の3社共同で「ブロックチェーンを活用した調剤薬局のデッドストック解消サービス」を想定したPoCを行いました。
■PoC実施の背景:現在の調剤薬局が抱える課題
全国の調剤薬局数は2015年末時点で58,000店舗(厚生労働省 平成27年度衛生行政報告例より)。国内人口の高齢化による影響で市場は拡大しており、その数は全国のコンビニエンスストア店舗数(約54,000店舗)よりも多い状況です。しかし、医療費削減の流れから、調剤報酬の引き下げによって薬価差益が縮小し、利益率は恒常的に下落しています。また後発品(ジェネリック)の普及により常備する在庫品が増加しているため、デッドストック医薬品が在庫を圧迫し、これまで以上に効率的な薬局経営が必要となっています。
そのような背景の中、2016年12月に経済産業省からの発表で、薬局間の医療用医薬品の売買に係る、医薬品医療機器法の適用範囲がより明確となりました(※4)。このことにより、これまで仲介業者が支援してきたデッドストック解消サービスが医薬品医療機器法の適用外となり、改めてコスト削減のために慣例的に行われてきたデッドストック医薬品の譲受・譲渡サービスの拡大が、新市場として期待されています。
一方で、すでに信頼関係のある調剤薬局間「以外の事業者間で」取引を行う際の信頼性を、どのように担保するかという点が課題となっております。現在の買取サービスやオークション形式の取引では「手数料の高さ」や「取引先・システムに対する不安」「流通商品が真性品であるかどうか」など、ユーザーはさまざまな不安や不満を抱えており、「手頃な料金で安心/安定した取引を行いたい」というニーズが存在します。
また、調剤薬局市場は寡占化が進んでおらず、売上上位10社の占める市場シェアはわずか15%。系列店舗を多く抱える大手企業では、店舗間の在庫移動などでデッドストックの解消を図ることが可能ですが、残り85%にあたる約49,300店舗の多くは個人経営薬局と言われており、見ず知らずの事業者間でのデッドストック医薬品の取引に不安を感じている可能性が高いと考えています。
本プラットフォームは、ブロックチェーンを活用することでそのような不安を解消し、ニーズにお応えする取引サービスを提供できるのではないかと考え、企画を行いました。
■PoC概要
今回のPoCでは「フェーズ1」として、まずは、ブロックチェーンの技術的な特長である「履歴の改ざんがされにくく、高い透明性や信頼性をインターネット上で確保できる」という点を活かし、システム内の仮想通貨で取引を行い医薬品売買を行うことを想定したシステムを構築し、以下の5つの評価ポイントを軸にさまざまな検証を行いました。
- トレーサビリティの実現性
- ブロックチェーンのマルチシグを用いたエスクロー決済の実現性
- 改ざんなどの攻撃に対する耐性
- 仮想通貨の実用可能性
- コスト削減の可能性
ブロックチェーン上に取引情報を記録することで「医薬品自体の登録履歴や発送・納品時の承認状況などの履歴」といった事実を半永久的に証明・保証することが可能となるため、安全で効率的な流通体制を構築し、適正な在庫量を管理する仕組みが実現できると想定しています。
なお、技術要素としては、「IBM Cloud」で提供されるブロックチェーン基盤を利用しています。
■今後の展望
「フェーズ1」で得られた検証結果および実運用に向けての課題を整理し、より実サービスに近い形での検証項目を加え、2017年中を目処にPoC「フェーズ2」を開始する予定です。
また、PoCで得られた情報は、BHIPにおけるブロックチェーンエンジニア育成・啓発活動にも最大限活用する方針です。PoCでの開発データを含む成果物はすべて公開(一部はBHIPパートナー限定公開)とし、さらに勉強会などを通じて北海道内のブロックチェーンエンジニアの育成と、北海道のIT市場振興に貢献して参ります。
▼BHIP、ブロックチェーンを活用した医薬品売買システムのPoCを完了
▼ブロックチェーンオンライン公式サイト
▼インディール公式サイト